新電力か大手電力かを問わず、「卒FIT」への関心が高い。だが、卒FITは一般送配電事業者がインバランスリスクを負う特例が使えない。小売電気事業者は需要予測に比べて遙かに大きな誤差が生じ得る太陽光発電のインバランスリスクを自ら負う覚悟が必要だ。電力・ガス取引監視等委員会事務局に出向経験のある筆者が展望と求められる戦略やスキルを解説する。

 2030年に販売電力の44%以上を非化石電源にすることを小売電気事業者に課す高度化法(エネルギー供給構造高度化法)。その目標達成に向けた議論が本格化するのに合わせて、電力市場で再生可能エネルギーへの注目が高まっている。

 なかでも、市場関係者が熱い視線を注いでいるのが「卒FIT電源」だ。FIT(固定価格買取制度)で導入した電源のうち、固定価格買取期間が終了したものを指す。2009年にFITが始まった家庭用太陽光発電は、10年の買取期間終了が2019年11月から順次始まる。

 大手電力か新電力かを問わず、既に多くの小売電気事業者が卒FITの買い取りメニューや関連サービスの発表を始めている。卒FIT電源の獲得に向けた競争が熱を帯びている。

 小売電気事業者にとって卒FITの増加は、自由に買い取れる再エネ電源が増えることを意味するが、チャンスばかりではない。変動電源のインバランスリスクを小売電気事業者が背負うことになる。

需要予測よりはるかに大きな誤差

 FIT制度は大量の再エネを生み出した。その影響で卸電力市場における電源構成も大きく変わった。だが、これまで太陽光や風力などの変動電源の発電予測誤差が卸電力市場での取引に直接、影響することはなかった。「FITインバランス特例制度」により、大部分は一般送配電事業者が発電量予測誤差の調整を行ってきたためだ。

卒FITを買い取れば小売電気事業者がインバランスリスクを負う
計画値同時同量制度におけるFIT特例措置の概要(出所:電力・ガス取引監視等委員会 第25回制度設計専門会合資料)

 ゆえに、小売電気事業者が直前の予測誤差を調整するための時間前市場は、取引規模がもっぱら「需要予測」の誤差水準にある。

 FIT制度からの卒業は、当然、FITインバランス特例制度からの卒業でもある。小売電気事業者が卒FIT電源を調達するということは、変動電源の発電予測誤差の調整を自ら行い、インバランスリスクにさらされることを意味する。

 変動電源の発電予測誤差の規模は、現状、小売電気事業者が対応している需要予測の誤差よりもはるかに大きい。エリアインバランスの大半が変動電源の予測誤差で占められることも少なくない。

エリアインバランスに太陽光予測外れが占める割合は大きい
余剰または不足のコマにおけるFIT特例①に太陽光予測外れが占める割合[2017/4/1~10/31](出所:電力・ガス取引監視等委員会 第25回制度設計専門会合資料を基に作成)

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