今夏、米国テキサス州で電力価格が1000円/kWhという日本では信じられないような高値がついた。しかし、これは電力関係者が“期待”していた事態だという。卸電力市場の価格シグナルで発電への投資を呼び込もうとするテキサスの取り組みを紹介する。

テキサス州最大の都市、ヒューストンのダウンタウン(出所:PIXTA)

 2019年8月13日、米テキサス州の卸電力取引所は一時、9ドル/kWhを記録した。円に換算すれば約1000円/kWh。日本でなら前代未聞と言っていい水準だろう。テキサスではこの日だけでなく、翌々日の15日も一部の時間帯で9ドル/kWhの超高値をつけた。

 気温上昇により電力需要が増えたことに加え、一部の発電設備の故障も重なり、供給予備力が不足したことに市場が反応したものである。

 同州は容量市場を持たず、予備力の確保も卸電力市場の価格シグナルを使う。電力量(kWh)取引しかないので「Energy-Only-Market」と呼ばれている。需給ひっ迫時には卸電力価格をあらかじめ決めた上限まで半ば人為的にスパイクさせることで予備電源の収入を補い、電源への投資を呼び込むという考え方だ。

 テキサス州は人口、GDP(国内総生産)がともにカリフォルニア州に次ぐ全米第2の州だ。世界と比較してもGDPは第10位で、日本の4割弱の水準にある。電力需要も同様に日本の4割弱だ。

 人口は年率+2%で推移しており、この1年間で40万人増えた。多様な産業が集積していることに加えてシェール革命の震源地でもあり、エネルギー関連産業が活性化している。こうした状況を背景に電力需要も着実に伸びている。

 2018年は猛暑で、7月19日に電力需要が7330万kWとピーク需要を記録を更新した。今年は平年並みの気温予想だったが、8月に入ってから猛暑となり、12日には7450万kWと前年の記録をあっさり塗り替えた。

 同州の系統・市場運営機関であるERCOT(Electric Reliability Council of Texas)のリアルタイム(当日)市場価格は、12日の午後に6.5ドル/kWhの高値をつけ、供給力がさらに少なくなった13日の15時15分には上限価格である9ドルに達し、この状態が1時間程度続いた。15日にも再び9ドルを記録した。グラフ1は8月12~15日の1時間平均需要量および15分ごとの価格の推移を示している。

電力市場価格が9ドル/kWhの超高値をつけた
グラフ1●テキサス州の電力需要量と卸価格の推移[2019年8月12~15日](出所:ERCOT)

廃止が進む石炭火力発電

 テキサス州は電力需給が逼迫する要因がそろっている。人口増加や産業の発展により電力需要が堅調に伸びている。一方で、石炭火力の廃止が急速に進んでいる。電力価格が長期にわたり安値で推移し、他の電源との競争に負けているためだ。老朽化も進んでいる。

 米国の卸電力価格は近年、低い水準に下がっている。低コストのシェールガス増産、コストが急低下してきている再生可能エネルギーの普及などが主な要因だ。

 テキサス州の卸電力価格は米国の中でも安く、近年は平均すると3セント/kWh前後で推移している。2018年の電源種別割合は天然ガス火力が44%、風力は19%を占める。全米平均はそれぞれ34%、7%である。また、完全自由化の下で、安い卸価格は小売価格に反映され、消費者は全米平均を下回る安い電気料金を享受している。

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