7月のEU首脳会議で合意を見た「欧州復興基金」創設は、コロナ禍からの経済的復興をCO2削減対策に託す大型プロジェクトとして世界を驚かせた。当初、EU内にあった不協和音を乗り越え、2050年の気候中立実現を担保する大型の資金的な裏付けを手にした。その本気度と粘り強さは日本政府の手本にもなるはずだ。

(出所: Adobe Stock)

 7月21日、EU首脳会議は中期予算と欧州復興基金(Next Generation EU)創設で合意した。

 新型コロナ禍による経済ダメージからの再起を目指す欧州復興基金はグリーンリカバリーファンドとも呼ばれる。2050年の気候中立(温室効果ガスの正味排出量ゼロ)を公約に掲げるEUにとって、その実現に向けた大きな一歩にもなった。

 今回は、EUのグリーンリカバリー(脱炭素社会への移行とコロナ禍からの経済復興の両立)を資金と運用基準の両面から裏付ける欧州復興基金に焦点を当てたい。

禁じ手だった「債務相互化」に踏み出す

 欧州復興基金は総額で7500億ユーロ(約94兆円)という規模に上る。3900億ユーロの補助金(グラント)と3600億ユーロの低利融資(ローン)からなる。

 同時に決まったEU中期予算は2021~27年度に1.1兆ユーロ(約138兆円)。復興基金は中期予算に上乗せされるものとして、7年間で執行される。

 基金の最大の特徴は、EU委員会がEU共同債を発行し、資本市場から調達した資金を加盟国に必要度に応じて配分するものであることだ。複数の国が共同して発行する債券は「債務相互負担(Debt Mutualization)」につながるものとして、特にEU内の先進諸国からの批判が大きく、これまで長年禁じ手とされてきた資金調達法だ(表1)。

総額で7500億ユーロ(約94兆円)
表1●欧州復興基金の規模と歳入(出所:EU資料を基に著者作成)

 EU委員会が発行する債券はトリプルAの格付けを有しており、これだけの規模の発行はEU資本市場の活性化につながるとともに、低コストの資金調達は加盟国の負担軽減にもつながる。2021~24年に発行し、次々期中期予算以降となる2028~58年の最長30年間で償還する。EUは財政規律の観点から歳出規模を域内総所得(GNI)の1.2%を上限としているが、今回は特例措置として2.0%まで引き上げる。

 償還資源を30年間という長期に分散した歳入に求めるわけだが、現状の加盟国負担金を主とする歳入源に加えてEU独自の新たな収入源確保を目指す。

 首脳会議では、2021年からのプラスチック廃棄物税の新設が決まった。また国境炭素税、デジタル税の導入について準備することも決まった。新財源の有力候補として挙がっていた欧州排出権取引の航空機・船舶への拡大に伴う増収と金融取引税は「要検討財源」とされた。

経済と気候中立化への危機感

 EUは市場統合、通貨統合、金融において進展してきた。財政の統合も議論の遡上に上るものの、これまでは先進国の反対で頓挫してきた。

 今回も、巨額のグラント交付をめぐり首脳会議は紛糾した。返済義務を負うローンでは現状でも重い負債が、さらに累積することになるとの懸念が強かった。

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