容量市場に関して、さらなる情報公開を求める声が大きくなっている。焦点の1つは個別電源の応札や落札に関連する情報だ。
 現行ルールは、新電力が発電事業者と相対契約の見直しを協議するにあたり、契約に関係する電源の落札結果に限って当事者に開示すると定めている。
 電力ビジネスを手がけるプレーヤーにとって、容量市場で何が起きているのかを推測することは事業戦略の立案に生きるのはもちろんのこと、適正な取引や市場形成にも欠かせない。そこで今回は公開されている情報から、容量市場における発電事業者の応札行動を読み解いてみたい。

(出所:Adobe Stock)

 2020年度容量市場メインオークション(2024年度実需給)の約定結果は、市場管理者である電力広域的運営推進機関から一定程度の情報が公開されている。

 しかしながら、具体的にどの電源が応札したのか、落札したのかという個別情報は非公開だ。

 容量市場を導入済みの諸外国では、英国が個別電源の落札に関する情報を公開している。一方、米国PJMやフランスはそこまでは公開していない。すべてを公開することは市場における適切な競争を阻害する可能性があることなどが理由のようだ。

 国内では容量市場に関する情報公開について、検討を進める予定になっている。情報公開をどこまで求めるかは今後の議論だが、公開された情報からプレーヤーが市場で起きていることを様々推測することは、適正な取引や市場形成を進めるうえで、むしろ欠かせないことだろう。

 そこで、ここでは現時点で公開されている資料から得られる情報をもとに、どの電源が応札したのか、推論を試みる。とはいえ、1000件を超える応札電源すべてを対象にするのは現実的ではない。以下の3つの理由から対象を原子力発電に絞って検討した。

(1)1基当たりの出力(容量)が大きく、オークション結果へのインパクトが大きい。オークション目標調達量は1億7746万8513kWと、「上限価格における調達量」である1億7652万5671kWとの差はわずか94万2842kW(0.53%)であるため、原発1基の応札の有無が約定結果に大きな違いをもたらし得る。

(2)相対的に電源数が少なく、電源を特定できる可能性が高い。

(3)2024年度の供給力提供の蓋然性、すなわち稼働の蓋然性を「新規制基準適合性審査」の進捗状況という別の角度から補完的に判断が可能である。

 詳しくは後述するが、原発は通常、既設電源(容量市場の結果によらず翌年以降も稼働を決めている電源)に該当するため、ゼロ円で応札し、応札した電源はすべて落札したと考えられる。

 以下の推論では、広域機関による公開情報のほか、電力・ガス取引監視等委員会が市場監視の1つとして実施した「売り惜しみ」に対する監視の報告情報を用いる。

 容量市場オークションの原発に関する公開情報は表1の通りである。表1の件数や容量の公開情報を手掛かりに、原子力発電事業者の応札行動を把握するとともに、可能な限り具体的な電源を特定しようという試みである。

応札容量は704万kW
表1●原子力に関する公開情報(出所:電力広域的運営推進機関)

事前の容量登録が応札の条件

 電源が容量市場に参加するにはまず、事前に容量登録を行い、その後、実際に応札するかどうかを決めるという手順を踏む。原発事業者には応札行動に関して次の4つの選択肢が存在すると仮定する。

・容量登録のうえ応札する→①に該当

・容量登録するが、応札を見送る(応札見送り)→②に該当

・容量登録するが、小さい容量で応札する(縮小応札)→③に該当

・容量登録しない

 表1にある①~③の合計1509万kWが何らかの容量登録したものと推測される。現在国内には33基・3324万kWの原発が存在する。このうち、容量登録に至った電源は45%に留まったことが分かる(容量登録見送りが1815万kW)。

1815万kWは容量登録されなかった
図1●全原発の応札行動(出所:広域機関の資料を基に著者作成)

 「メインオークション募集要項」では、容量オークションに参加できない電源を定めている。その1つが「実需給年度中に供給力を提供できない電源(建設未完了など)」である。同時に、これらの条件に該当する電源は「容量オークションに参加できない(該当する場合、電源等情報の登録は不可)」とも定められている。

 つまり原則としては、「容量登録を行うこと」=「応札」が想定されていると理解できる。

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