かつて自治体新電力の雄として注目を集めたみやまスマートエネルギー。福岡県みやま市が出資して2015年に設立した同社は、電力供給と多様な地域サービスを組み合わせた先進的な取り組みを展開した。他方、その注目度の高さゆえ、赤字決算やガバナンスの不備などへの報道も相次ぎ、一時は混乱の時期を過ごした。今回は、みやまスマートエネルギーの事例から、自治体新電力の運営やガバナンスを考えてみたい。

福岡県南西部に位置する人口4万人弱のみやま市(出所:Adobe Stock)

 福岡県南西部に位置する人口4万人弱のみやま市は、人口減少や高齢化など他の地方都市と同様の課題を抱える。

 東日本大震災以降のみやま市は、地域産業の振興や地域経済循環などを目的に再生可能エネルギーの推進に力を入れた。2013年には、約16年間塩漬けの土地であった市有地を活用し、市内商工事業者への呼びかけるとともに市自らも出資してSPC(特別目的会社)を立ち上げ、5MWのメガソーラーを設置した。

 2014年には、国が募集していたバイオマス産業都市に応募し認定を受け、2018年にはみやま市バイオマスセンター「ルフラン」を本格稼働している。みやま市は日照時間が長いため太陽光発電の採算性も高い。市の後押しもあり地域住民における太陽光発電設置も盛んである。

 また、2014年からHEMS(家庭用エネルギー管理システム)の実証事業を実施。市内世帯の約7分の1となる約2000世帯にHEMSを導入した。

 こうした取り組みを進める中、みやま市は市内に導入が拡大している再生可能エネルギーの地産地消やHEMSを使った市民向けサービスを実現するため、自治体新電力みやまスマートエネルギーを設立する。電力全面自由化を翌年に控えた2015年のことだ。出資比率は、みやま市55%、九州スマートコミュニティ(その後「みやまパワーHD」に名称変更)、筑邦銀行5%で立ち上がった。

地域サービスに全国展開、一線を画した存在だった

 2016年4月からは自治体新電力としては日本で初めて家庭向けに電力の供給を開始。また、HEMSを活用した高齢者の見守りサービスや、市内商店の品物の宅配サービス、地域食材が味わえるレストランやコミュニティスペースの入った「さくらテラス」の建設など、地域課題解決を目指した取り組みを矢継ぎ早に実施した。

 さらに、その事業領域はみやま市に閉じず全国的な業務拡大を進めた。まず、鹿児島県いちき串木野市や肝付町、大分県豊後大野市、竹田市など、みやま市と同様の地域課題を抱えたエリアの地域新電力との連携を進めた。

 続いて、東京都の外郭団体であり新電力事業も手がける東京都環境公社の需給管理支援を受託した。また、東京都目黒区の公共施設に、目黒区の連携都市である宮城県気仙沼市のFIT電気を供給した。特定地域で活動するのが一般的な自治体新電力の中にあって、みやまスマートエネルギーのビジネスモデルは極めて特徴的だった。

 当時、多くの自治体新電力が公共施設などへの電力の供給にとどまっており、みやまスマートエネルギーの先進的な取り組みは他社とは一線を画していた。このため、取材や視察が殺到し、ピーク時の視察者は年間800人に上った。みやまスマートエネルギーを視察し、自治体新電力の設立検討を本格化した地域も多い。

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