東芝は4月7日、英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズから2兆円超の買収提案を受け、検討に入った。CVCは東芝の6日の株価に3割のプレミアムを乗せた買収額を提案した模様だ。2015年の不適切会計問題から経営不振にあえいできた東芝に残された成長の道筋とは。

(出所:Adobe Stock)

 CVCが東芝を買収した場合、市場価値の3割増しの買収額を回収するために取るべき選択肢は2つしかない。

 1つは、総合力を生かしたクロスファンクショナルな事業展開を進め、企業価値を3割高める方法だ。これは東芝がアニュアルレポートなどで標榜している戦略でもある。

 そしてもう1つは、現在の総合メーカーの形にこだわらず、競争力のある事業を個別に成長させる方法だ。事業ごとに売却する手もあるし、持ち株会社制など東芝の傘下に置きながらも、外部からの資金を呼び込み、伸ばしていく手もある。

 どちらの成功確率が高いかといえば、普通に考えれば後者だろう。というのも、クロスファンクショナルチームでの収益拡大は、不適切会計問題が明るみにでるよりもずっと前から手がけてきた手法だが、目立つ成果は上がっていない。

医療、半導体に原子力、東芝は中核事業を手放した

 しかも、東芝はクロスファンクショナルで収益を最大化する際に不可欠な会社の柱となる事業を既に手放してしまっている。

 2016年にメディカル子会社の東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却。医療部門は、東芝が将来の柱にするとカネをかけ、戦略を練って進めてきた事業だ。それを債務の立て直しのために売却してしまった。

 稼ぎ頭で虎の子だった半導体事業も同様だ。2018年に半導体子会社の東芝メモリを米投資ファンドのベインキャピタルが率いる日米韓連合に売却した。

 医療と半導体と並ぶ中核事業だったのが原子力だ。そもそも、不適切会計問題を引き起こすきっかけになったのは、米原子力メーカーのウェスチングハウスの買収だった。だが、東京電力・福島第1原子力発電所の事故から10年がたった今、原子力事業の成長は期待薄だ。エネルギー事業では、米国で手がけたLNG事業は、大きな損失を出して2019年に撤退している。

 医療と半導体と原子力。この3つの事業は、ほんの数年前まで東芝が会社の柱と言っていた事業だ。こうした中核事業を手放した今、総合力を武器に成長を描くというのは、並大抵のことではない。

 他方、東芝には、地熱発電やエレベーター、量子コンピューターなど世界のトップを走る事業や技術がある。量子コンピューターなどのこれからのテクノロジーは、別会社化して大きなファンドを入れれば、東芝の中の限られた資金で事業化するより日本に、世界に貢献できる。

 ただ、どれも医療、原子力、半導体に比べると小粒だ。世界のトップに躍り出たとしても、稼げる金額には限界がある。東芝には、こうした小さいけれど優れた技術がたくさんあるが、「総合メーカー」を支える屋台骨としては心許ない。

 かつて柱に据えていた医療や半導体、原子力は、企業規模が大きくなければ手がけることができない事業だった。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経クロステック登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経クロステック登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら