容量市場の初回約定結果は、老朽化した高コストな石油火力の維持が目的だったとしか考えられないものだった。しかも、石油火力の維持と引き換えに、1兆円を超える過剰収益が他の電源にもたらされた。新電力だけでは負担しきれず、国民負担となるのは必至。日本が抱える供給力確保の根深い問題を容量市場だけでは解決できないことは明白だ。

(出所:Adobe Stock)

 2020年9月に公表された容量市場の初回約定結果(2024年度向け)は、1万4137円/kWという異常な高値で上限価格に張り付いた。

 容量市場を導入済みの諸外国でも例のない約定価格だったが、電力・ガス取引監視等委員会は「売り惜しみや価格吊り上げといった問題となる行為はなかった」と結論づけた。制度を所管する経済産業省も、約定価格は市場が出した答えであり、結果そのものに疑義はないとの姿勢を崩していない。

 4月15日には2021年度入札に向けた容量市場の制度見直し案を取りまとめたが、その内容は微修正にとどまるものだった(「容量市場の見直しは“微修正”止まり、根本課題にはノータッチ」)。

 だが、内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」からは「一時凍結した上で、廃止を含めて抜本的に再検討すべき」と、開始早々に制度そのものの見直しを求める声が上がっていた。

 供給力の確保は、電力システムを維持するうえで非常に重要な論点だ。2021年度入札に向けた見直し案を見ても、今冬の需給ひっ迫や電力広域的運営推進機関が公表した新たな供給計画などに見る供給力の不足とアンバランスさを解決できているわけではない。

 2050年のカーボンニュートラルに向けて、世界が動き出した今、供給力の確保と脱炭素という難しいかじ取りも必要だ。小手先の見直し議論に終始するのではなく、将来を見据えた抜本的な議論が必要だろう。

容量市場は高コストで老朽化した電源を温存する

 昨年の容量市場オークションの結果が適切なルールや仕組みのもとに行われていたとすると、この価格は「4年後に必要な供給電源の中に極めてコストの高いものが存在する」ということを意味している。

 広域機関が2020年9月14日に公表した報告によれば、応札容量は全体1億6769万kW。応札価格が1万4000円を超えていたものが実に929万kWも存在したという。そのうち64%が石油火力で、31%がLNG火力だったと報告している(図1)。

 落札電源個別の情報は非公開だが、旧式のボイラー焚き汽力発電だと推定される。現在主流のLNG火力は、LNGを燃やした高温高圧のガスでガスタービンを回して発電する。旧式のボイラー焚き汽力発電は、LNGを燃やした熱で作った高温・高圧の蒸気を作り、これで蒸気タービンを回して発電する。

 石油火力や旧式ボイラー焚き汽力発電といった維持費の高い古参の電源が、容量市場の約定価格を釣り上げたのだろう。

石油火力と旧式のボイラー焚きガス火力が占める
図1●容量市場の初回オークションで1万4000円/kW以上で応札した電源の内訳(出所:電力広域的運営推進機関)

 2025年度のオークションで募集容量を増やしたり、新たな供給力やネガワットが大幅に増えない限り、2024年度向けと同様に高コスト電源が約定価格を決めることになる。経産省は初回約定結果が著しく高騰したことについて課題認識をおり、見直す姿勢を見せてきた。

 実際、今冬の需給ひっ迫による市場高騰を受けて1月25日に行われた経産省の制度検討作業部会では、「kWを確保する容量市場では今回のようなkWhひっ迫に対応できない」といった意見や、「ひっ迫時に寄与した石油火力などの経年火力の扱い」について論点が挙げられた。

 だが、先日取りまとめた見直し案を見る限り、再び上限価格と同水準の約定価格となってしまうだろう。

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