世界でCO2排出を「2050年に実質ゼロ」にする動きが強まっている。2018年のCOP24(第24回気候変動枠組条約締約国会議)を機に、産業革命以降の世界の平均気温の上昇を「2℃」から「1.5℃」へと、さらに抑えるべきだとする考えが広がってきた。しかし、排出削減の鍵を握る自動車産業がいかに力を注いでも、新たな目標達成は難しい。

(出所:PIXTA)

 国連総会に合わせて各国の首脳らが集う「気候行動サミット」が9月23日、米ニューヨークの国連本部で開かれた。締めくくりに当たって、グデレス国連事務総長は「77カ国が2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを約束した」と成果を誇った。米国の離脱など国際的な取り組みとしての実効性が揺らぐ中、国連は温暖化対策の強化で多くの国々の結束を演出することに成功したと言えそうだ。

 しかし、「2050年実質ゼロ」という目標はさすがに高すぎると言わざるを得ない。自動車エンジンの技術者だった筆者には、とりわけ自動車分野では非現実的に映る。

 今回の「2050年実質ゼロ」は「1.5℃目標」が根拠になっている。

 2020年以降の法的枠組みであるパリ協定(2015年12月の第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択)は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という共通目標に基づいて、「21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」という長期目標を掲げた。この長期目標は「2℃」を意識したものだった。

 ところがここにきて、究極の努力目標だったはずの「1.5℃」を追求しようとする動きが強まっている。

 節目になったのが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年10月にとりまとめた「1.5℃特別報告書」だ。

 内容を簡単に言えば、「現在の進行速度では、地球の平均気温の上昇は2030~50年にも1.5℃に達してしまう」「しかし、これから各国が努力を積み増しすれば、気温上昇を1.5℃までに抑えることは不可能ではない」「気候変動による悪影響がより軽微で済むよう、温度上昇を1.5℃に抑える最大限の努力をすべき」としたのである。

 2カ月後にポーランドで開かれたCOP24(第24回国連気候変動枠組条約締約国会議)は、締約国に対して特別報告書に含まれる情報を活用することなどを求める決定文書を採択した。パリ協定が採択されたCOP21における合意目標を、努力目標とは言え事実上、引き上げる方向性が示されたのである。

 図1は気温上昇を「2℃」から「1.5℃」に抑えようとしたときのCO2排出カーブの想定である。「2℃」であれば2080~2100年に実質ゼロにできれば達成できる水準だが、「1.5℃」になると実質ゼロを達成する時期を2040~55年に前倒しする必要がある。「2050年に実質ゼロ」という目標はここからくる。

1.5℃に抑えるには「実質ゼロ」を2050年まで前倒し
図1●COP24にて強化されたCO2排出削減目標(出所:著者作成)

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