世界各国で自動車の電動化を促す動きが強まっている。しかし、ことが環境問題だけなら各国の今後の政策次第という側面もある。自動車産業が本当に危機感を持たなければならないのは、近い将来に直面するかもしれない石油の供給不足という資源制約だ。

(出所:PIXTA)

 自動車産業は気候変動対策に必死だ。しかし、環境問題以上に厳しい資源問題に直面する可能性がある。

 前回の当コラム記事、「『2050年、実質CO2ゼロ』は実現できない」において、2050年までにCO2排出ゼロを目指しても、市中在庫を含めればガソリン車やディーゼル車を完全になくすことは困難なことを示した。

 しかし、自動車産業は電動化の手を緩めていいことにはならない。石油資源の制約が自動車産業に重くのしかかる可能性が高いためだ。

 グラフ1は世界最大の石油企業、米エクソンモービルが将来の営業活動の前提として考えている石油需要予測である。エクソンモービルが将来計画を株主に説明するために用いるグラフでもある。

 2040年に向けての世界の石油需要は右肩上がり。EV(電気自動車)の最大導入(破線)を想定しても2040年で90mbd(1mbd=日量百万バレル)の需要を予測している。破線を外挿して2050年の需要量を見積もってみても、ほぼ現状並みの80mbdだ。こうした需要の増加を前提に、エクソンモービルは石油開発投資を計画しているというわけだ。

 同社は現在、シェールオイルの増産に取り組んでいて、これが成功すれば、このグラフのような需要に応える生産増が世界全体で可能になるかもしれない。同社だけでなく世界の石油生産量の増加は、ひとえに米国のシェールオイル事業の成否次第なのである。

石油需要に応じて生産量を本当に増やせるか?
グラフ1●エクソンモービルが想定する将来の石油需要(出所:エクソンモービル)

 しかし、米国のシェールオイル開発には資源量の限界に採掘技術の限界が加わり、2020年以降は生産量が減少する可能性が高いことをすでにこのコラムで報告した(「鮮明になってきた米国シェール革命の限界」参照))。この状況は最近、一層鮮明になっている。具体例として、近年の米国の石油生産実績をグラフ2に示す。

減速が鮮明なシェールオイル生産
グラフ2●米国の2016年以降の石油生産履歴(出所:“US Shale Production Is Set For A Steep Decline”, By Nick Cunningham, OilPriceCom, Oct 01, 2019)

頼みのシェールオイルに陰り

 グラフ2は2016年以降、シェールオイルの増産傾向が2018年から平坦化し、2019年から下降傾向に転じたことを示している。2018年末から米国の石油開発掘削機(リグ)数が、減少し続けていることも既に報告されている(”U.S. oil drillers cut rigs for seventh week in a row” -Baker Hughes, Oct 4 2019, Reuters)。その結果が生産量減少として顕在化してきているのである。

 この下降傾向は、今後継続すると予測されている。中小のシェールオイル開発事業者が負債を抱え破産する例も頻繁に報告されている。米石油産業の構造的縮小が始まっている(*1)。

*1:“Exxon Mobil Trading Near Year Low; This Isn't A Cyclical Down Turn, It Is Structural”,Sep. 5, 2019, seekingalpha.com

 エクソンモービルの当初の思惑とは裏腹に、同社がシェール開発に参入して以降、同社の収益も減少している。米格付け会社、S&Pも格付けを引き下げたと報道されている(*2)。エクソンモービルのシェール開発参入を疑問視する報道も散見されるようになった。

*2:“Exxon Drops Out Of Top 10 In S&P 500”, Sep 02, 2019, oilprice.com

 このような環境では、エクソンモービルが期待するグラフ1のような2050年に向けて世界の石油需要に応えて、生産増加が継続するというシナリオはまず成立しないだろう。

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