ネガワットで失う小売電気事業者の売り上げを補填

 だが、今回の公募でネガワットによる調整力供給を落札したあるネガワット事業者は、「想定していたほどの利益が出そうにない」と顔を曇らせる。ネガワット調整金の支払いが、当初の想定よりも高額になる可能性が高いためだ。

 ネガワット取引は、ネガワットを必要とする送配電事業者や小売電気事業者がネガワット事業者に対価を支払って需要家の節電を集めてもらう。ネガワット事業者は需要家に報酬(対価)を支払う条件で節電を要請する。

 その際、節電をした需要家に電気を供給していた小売電気事業者は当然、節電分の売り上げが減ることになる。売り上げの減少に合わせて、仕入れ(発電)を減らせるならば、それも「仕方がない」で済む問題かもしれない。しかし、ネガワットの場合、そうはならないのが通常の節電と異なる。それを補填するために支払うのがネガワット調整金だ。

 小売電気事業者が100の電気を供給する予定だった需要家が20の節電をしたとする。これをネガワット事業者が買い取り、送配電事業者に調整力として20のネガワットを販売する。ネガワット事業者の存在を抜きに考えれば、これは小売電気事業者が供給した100の電気のうち、需要家は80だけを使い、残りの20は送配電事業者が使ったことと同じになる。つまり、この場合のネガワットとは需要家から送配電事業者に需要の一部を付け替えることなのである。小売電気事業者が100の電気を供給しなければならないことに変わりはない。

 にもかかわらず、80の売り上げしか立たないとしたら、小売電気事業者にはいい迷惑でしかない。そのため、小売電気事業者の収入減は、ネガワットの販売で売り上げを立てたネガワット事業者が補償するのが筋という話になる。

 つまり、送配電事業者へのネガワット供給(調整力)を落札したネガワット事業者は、節電要請の対象となる需要家に電気を供給している小売電気事業者とネガワット調整金について交渉する必要がある。節電要請の契約を交わす需要家の多くはエリアの大手電力から電気の供給を受けており、ネガワット調整金を支払う相手は大半が大手電力の小売部門ということになる。

ネガワット調整金がネック
他社の顧客からネガワットを集めるケース(出所:日経エネルギーNext)