独禁法に詳しい西村あさひ法律事務所の松平定之弁護士は、こう説明する。

 「一般論として差別対価の認定は、標準約款の適用の有無という形式論ではなく、いったん新電力に離脱した顧客を正当な理由なく、それ以外の顧客(新設の需要家など)と比べて不利な取り扱いをすることで、新電力への離脱の抑止効果が生じているかどうかという実質論で判断される。新たな販売方針を検討する際には、競争法や適正取引ガイドラインの視点を忘れず、必要に応じて専門家に相談するといった注意深さが必要だ」。

 実は、戻り需要に関しては、適正取引ガイドラインに「戻り需要に対する不当な高値設定等」という項目が設けられており、「大手電力が戻り需要に対して不当に高い料金を適用すると示唆することが、需要家の取引選択の自由を奪う」と明記してある。

 ある大手電力OBは、「こんな風に警告を受けるなんて残念としか言いようがない。かつての大手電力ならば、絶対にやらないようなミスだ」と嘆息する。「適正取引ガイドラインが、やってはいけないと例示している内容を、その通りにやっているのだから、公取にとっては実に分かりやすいケースだったろう」。

経営破綻した新電力大手、ロジテックの影響も

 こんな話がある。各エリアで圧倒的な強さを誇る大手電力各社だが、「新電力への離脱が10%を超えると目の色が変わる」というものだ。

 既に離脱が10%を超えたのは、東京電力グループと関西電力、そして北電だ。東電や関電の値引き攻勢の凄まじさは「大手電力が猛攻、電気代3割引きの衝撃」で報じた通り。大手電力の値引き攻勢はとどまるところを知らない勢いだ。全面自由化以前には考えられなかった緊張感が、大手電力の営業部門にあるのは間違いない。

 さらに、「かつて契約量を急激に伸ばしていた日本ロジテック協同組合の経営破綻の影響もある」と複数の関係者が明かす。北電が標準約款を適用した戻り需要には、日本ロジテックが2016年4月に破産を申請したことで、北電に戻ってきた顧客が相当数、含まれているというのだ。ロジテックは強烈な安値を武器に、企業や自治体を開拓した経緯がある。

 「激安新電力に出ていった顧客が戻ってきたときに、わざわざ最初から値引きするのか?という心理は十分に理解できる」とある新電力幹部は言う。

 北電の今回の対応の背景には、いまだかつて経験したことのない状況があったのだろう。だが、戻り需要と新規顧客を明確に区別する基本方針を取りまとめて対応していた点は、弁解の余地がない。

 北電は、「警告が出る前からヒアリングなどを通じて公取の問題意識を認識し、営業方針を見直した。既に戻り需要についてもオプション契約など最適な料金の提案を行っている」。他の大手電力でも、適正取引ガイドラインの読み合わせや勉強会を開催するなど、改めてルールの理解を深める取り組みが始まった模様だ。公正な競争はルールに則って行うことが絶対条件。北電の事例を教訓に、今一度、競争ルールへの理解を深めていく必要がある。