全面自由化スタートから間もない2016年6月、新電力など市場関係者を驚かす事態が発覚した。「ある電力会社」で、送配電部門がルール通りに確保した調整力とは別に、小売り部門が同規模(想定需要の8%程度)の予備力を確保していたことを監視委員会が明らかにしたのだ(日経エネルギーNextでは「東電EPの予備力二重確保問題」として報じた)。

 大手電力は余剰電源の市場投入が義務付けられている。大手電力が確保するトータルの予備力が2倍に膨らめば、市場への投入量の減少につながる。今日までしばしば発生する市場価格高騰の大きな要因の1つと見られてきた。

「供給力確保義務」を根拠にした中部電と関電

 東電EPは、予備力二重確保問題についてはその理由を含めて詳細はこれまで一切明らかにしていない。だが、今回、監視委員会は一歩踏み込んだ。調査報告と合わせて、ゲートクローズ時点で予備力を確保していた4社のうち、中部電力と関西電力から責任者を有識者会議の場に呼び、その理由について説明を求めたのだ。

 中部電と関電はいずれも現時点で小売り部門が、想定需要の5%を予備力として確保していることを明かしたうえで、予備力確保の根拠として電気事業法が小売電気事業者に求めている「供給力確保義務」を挙げた。「5%」の予備力とは、気温上昇などによる自社顧客の需要の上振れリスクの95%をカバーできる水準として設定したものだという。

 そして、中部電力の予備力確保の説明に当たった勝田実・需給運用部長は「予備力を削減すれば、不足インバランスの発生が高まり、供給力確保義務を果たしていないと受け取られる懸念がある」と訴えた。

 こうした大手の小売り部門による予備力確保は果たして妥当なのだろうか。全体の電力需要の実態がほとんど変わらないなかで、全面自由化前に比べてトータルの予備力を自分たちの判断だけで増大させた大手電力の振る舞いは、市場で買い手となる新電力などから見れば理不尽に映る。

 一方で、小売電気事業者には需要の上振れを想定した供給力確保義務が課されているのも事実だ。問題は、どれだけ電源を確保すれば義務を果たしたことになるのかだ。

 この点について監視委員会幹部は「小売電気事業者の供給力確保義務については、過剰な予備力確保を抑制するための整理が必要だろう」と話す。

 例えば、スポット入札前までに何%確保していれば、市場に供出した結果、ゲートクローズ後の予備力がなくなり、不足インバランスを出したとしても供給力義務違反にならないといった“公式見解”のようなものが考えられる。現状は大手電力の中でも解釈は割れている。具体化すれば、大手電力の過剰予備力問題は緩和が期待できそうだ。

 監視委員会は今後、市場がひっ迫した時間帯での余剰インバランス問題の解明にも力を注ぐ。2016年度は東京エリアで余剰インバランスが目立ったが、2017年4月以降は関西エリアで急増している。需給の実態を映す市場にどこまで近づけるか。監視委員会の力量が問われている。