過剰な予備力を抱えていたのは、東京電力エナジーパートナー(EP)だけではなかった。

 今夏、日本卸電力取引所(JEPX)におけるスポット市場(前日市場)で需給がひっ迫し、価格が高騰した時間帯が頻出。にもかかわらず、当日は大量の余剰インバランス(需要に対する供給の過剰)が発生するという不可解な現象が多発した(「電力市場の連日高騰に“制裁強化”原因説」参照)。需給実態と乖離した市場価格の形成を重く見た電力・ガス取引監視等委員会は8月、売り手である大手電力の需給管理や需要計画の実態に対する調査を表明していた。

過剰予備力問題を有識者会議で審議

 その最初の報告の場となった9月29日の有識者会議で、監視委員会は大手電力9社のうち4社で、小売り部門が予備力(想定外の需要や供給力のブレに対応するための予備電源)をスポット市場入札時点で想定需要の「2~5%」以上、市場取引終了(ゲートクローズ)時点でも「2~3%以上」を確保していた実態を明らかにした。残り5社はスポット入札時点でも「0~1%」と予備力の確保は限定的だった。

「市場取引終了後、予備力は必要ないはず」

 全面自由化に合わせて、市場取引終了後の急な気温の変化に伴う需要の伸びや、電源の脱落(故障)などによる想定外の供給力低下に備えた予備電源は、一般送配電事業者(大手の送配電部門)が確保するルールが定められた。実需給時におけるエリア内の最終的な需給調整の責任は一般送配電事業者が負う。

 つまり、「原則としてゲートクローズ時点で小売電気事業者が予備力を確保する必要はない」(監視委員会幹部)。自社の顧客への電気供給義務を負う小売電気事業者の場合、気象の変化などに備えて確保していた予備力は、実需給の前日に取引されるスポット市場や、実需給直前に電源の過不足を調整する1時間前市場を通して、すべて放出しても問題はないというのが現在の制度である。

 逆に大手電力の小売り部門が、ゲートクローズ後に不要になるはずの予備力を市場に開放しなければ、その分、市場は需給がひっ迫し、卸電力価格がつり上がる恐れがある。

 「東電EPよる『予備力二重確保問題』はこれまでにも耳にしていたが、ほかに3社も同様のことをしていたというのには驚いた」(新電力幹部)。

 全面自由化以前、旧一般電気事業者は送配電や小売り部門を含む全社で、スポット入札時点でエリア需要の8%、時間前市場開場時点で5%の予備力を確保するのがルールになっていた。

 全面自由化後は電気事業者を、規制部門の一般送配電事業者と競争部門である小売電気事業者、発電事業者をそれぞれ切り分けるライセンス制を導入。エリア全体の需給を調整するための予備電源については、エリアの安定供給責任を負う一般送配電事業者が確保することをルール化した。送配電部門用と小売り部門用が明確には区分されていなかったそれまでの予備力と区別する意味で、一般送配電事業者が確保する電源は「調整力」と呼ばれたりする。


 全面自由化スタートから間もない2016年6月、新電力など市場関係者を驚かす事態が発覚した。「ある電力会社」で、送配電部門がルール通りに確保した調整力とは別に、小売り部門が同規模(想定需要の8%程度)の予備力を確保していたことを監視委員会が明らかにしたのだ(日経エネルギーNextでは「東電EPの予備力二重確保問題」として報じた)。

 大手電力は余剰電源の市場投入が義務付けられている。大手電力が確保するトータルの予備力が2倍に膨らめば、市場への投入量の減少につながる。今日までしばしば発生する市場価格高騰の大きな要因の1つと見られてきた。

「供給力確保義務」を根拠にした中部電と関電

 東電EPは、予備力二重確保問題についてはその理由を含めて詳細はこれまで一切明らかにしていない。だが、今回、監視委員会は一歩踏み込んだ。調査報告と合わせて、ゲートクローズ時点で予備力を確保していた4社のうち、中部電力と関西電力から責任者を有識者会議の場に呼び、その理由について説明を求めたのだ。

 中部電と関電はいずれも現時点で小売り部門が、想定需要の5%を予備力として確保していることを明かしたうえで、予備力確保の根拠として電気事業法が小売電気事業者に求めている「供給力確保義務」を挙げた。「5%」の予備力とは、気温上昇などによる自社顧客の需要の上振れリスクの95%をカバーできる水準として設定したものだという。

 そして、中部電力の予備力確保の説明に当たった勝田実・需給運用部長は「予備力を削減すれば、不足インバランスの発生が高まり、供給力確保義務を果たしていないと受け取られる懸念がある」と訴えた。

 こうした大手の小売り部門による予備力確保は果たして妥当なのだろうか。全体の電力需要の実態がほとんど変わらないなかで、全面自由化前に比べてトータルの予備力を自分たちの判断だけで増大させた大手電力の振る舞いは、市場で買い手となる新電力などから見れば理不尽に映る。

 一方で、小売電気事業者には需要の上振れを想定した供給力確保義務が課されているのも事実だ。問題は、どれだけ電源を確保すれば義務を果たしたことになるのかだ。

 この点について監視委員会幹部は「小売電気事業者の供給力確保義務については、過剰な予備力確保を抑制するための整理が必要だろう」と話す。

 例えば、スポット入札前までに何%確保していれば、市場に供出した結果、ゲートクローズ後の予備力がなくなり、不足インバランスを出したとしても供給力義務違反にならないといった“公式見解”のようなものが考えられる。現状は大手電力の中でも解釈は割れている。具体化すれば、大手電力の過剰予備力問題は緩和が期待できそうだ。

 監視委員会は今後、市場がひっ迫した時間帯での余剰インバランス問題の解明にも力を注ぐ。2016年度は東京エリアで余剰インバランスが目立ったが、2017年4月以降は関西エリアで急増している。需給の実態を映す市場にどこまで近づけるか。監視委員会の力量が問われている。