新制度も市場価格の不透明感を増す材料

 関電の高浜原発も稼働する中、太陽光発電の影響がより顕著になり、西日本のエリア価格は底値を探ることになると思われる。しかしながら、停止火力の残高は昨年より高水準だ。急に電力需給が厳しくなってもすぐに運転できる体制が整わない可能性がある。

 太陽光発電への依存が高まっている分、仮に今夏が日照時間の少ない夏にでもなれば、分単位で急減する太陽光発電を補うための電力供給は大きく不足する。そうした事態になれば、一気に価格が跳ねる素地が既に生まれていると考えられる。

 折しも、インバランス料金制度の見直しが議論されている。エリア間の調整力コスト(最終的なエリア需給を調整するために大手電力の送配電部門が支払うコスト)を反映させる「β値」が見直され、全国需給とエリア内需給の格差を調整する「α値」の算出方法が修正される。

 新たな算定法は夏過ぎ以降の導入になると見られるが、需給がタイトになった際のインバランス料金の上昇がより鮮明になりそうだ。すると、そうした局面では電力価格も上昇しやすくなる。

 加えて、大手9電力は発電部門と小売部門間の取引の透明性を高める自主的取り組みとして、自社の需要の一定割合をいったん市場に投入する「グロスビディング」を今年度から始める。システム対応の問題で各社の開始時期は異なるが、北海道電力、北陸電力、九電はすでに4月から始めているとされる。

 スポット市場における約定量の推移を見ると、4月は3月と大きな違いはないものの、5月は下旬に向けて顕著な増加を示している。グロスビディングが本格的に始まっている兆しが見られる。

 6月2日渡しの約定量は1億100万kWhに達し、過去最高を記録した。翌週の5日からの週は、後半にかけて最大約定量を連日超える状況が生じ、9日渡しでは1億600 万kWを超えた。

卸電力取引所での取引成立が急増
スポット市場における約定量の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

 グロスビディングは、大手電力が限界費用(燃料コスト相当)ベースで売り買い両建ての取引を行う。そのため、通常は市場価格への影響はニュートラルといわれている。ただし、需給ひっ迫時など供給力に余裕がないとなれば、自社需要を満たすための電力を確保するために、大手電力は50円/kWhというような高値で買い戻す“絶対買い”も辞さないという。そうなれば、価格は50円/kWhまで高騰する恐れがある。

 この4月から5月にかけてのJEPXの値動きを見ると、売り玉不足の懸念は一見、杞憂に思えるかもしれない。しかしながら、太陽光発電や停止電源の動向、グロスビディングなどの新制度の運営を合わせて考えると、波乱局面も十分にあり得る。

 市場の健全な育成に不可欠な売り玉不足の解消を根本的に考える段階に来ているのではないだろうか。