市場の異変の裏で大手電力が不適切な行為

 これには“2つの事件”が大きく関わっていると推測される。事件の1つは「予備力二重計上問題」だ。ある大手電力が2016年4月の全面自由化に合わせて、「インバランスを出さないこと」を理由にエリアで確保する予備力を恣意的な解釈で従来のほぼ2倍に増やしたことを電力・ガス取引監視等委員会が明らかにした(「自由化1年目の電力市場、東電による2大事件」)。その分、本来なら市場に投入されていた電源が減った可能性が高い。

 もう1つは、東京電力エナジーパートナー(EP)による「閾値設定問題」だ。これも監視委員会の調べで、東電EPが2016 年4 月から同年8 月末までの期間に、「自主的取り組み」のルールである限界費用(燃料費相当)から大きく乖離した「閾値(しきいち)」と称する高い価格で、スポット市場(1日前市場)において売り入札を繰り返していたことが明らかになった。

 監視委員会はこの行為を、不当に市場価格をつり上げた「相場操縦」とみなし、2016年11月に業務改善勧告を発した。グラフ1からは、東電EPへの業務改善勧告の前後から、夏場のピーク時間帯では売り入札量が大幅に改善された様子が読み取れる。

 だが、これで売り入札量不足が解消されたのかと言えばそうではなかった。

 冬のピーク時間帯(18~20時)に注目して作成したのがグラフ2だ(グラフ1とはスケールが異なる点は注意)。冬場においては依然、ピーク時間帯で売り入札量不足が続いた。

「閾値問題」後も冬場は売り玉不足が続いた
グラフ2●冬のピーク時間帯(18~20時)の売り・買い入札量の推移[2012年4月~2017年6月](出所:日経エネルギーNext電力研究会)

 冬場には別の要因も働いていたことが考えられる。この時期、監視委員会は「売り玉不足の懸念」(バランス停止火力問題)を指摘していた。

 全面自由化で顧客が電力購入先を切り替えて需要が新電力に移転した分、大手電力において電源(発電設備)が余剰となる一方で、新電力に奪われた需要分の電力が当該エリアで市場に追加供出されず、定常的に売り玉(売り入札量)不足となる状況が生じるようになった。加えて予定された火力発電所を思うように稼働させられず、当日になってバランス停止に追い込まれる事態も発生した(「電力は余っているのに、なぜ市場価格は高い?」)。

 こうしたいくつもの要因によって、2017年3月まで恒常的に売り入札量不足の状態にあったのが2016年度の卸電力市場だった。