11月以降、卸電力市場が再び異様な動きを見せている。エリアで異なる市場価格をつける市場分断が“日常”となる中、西日本エリアの電力価格が異常に高い。

 東京電力グループが拠点とする東京エリアは、10月の一時期に乱高下が見られたが、11月以降、昼間価格(8~22時)は10円/kWh前後と比較的落ち着いた展開をしている。夜間価格(22~翌8時)も12月に入って若干上昇しているものの落ち着いていると言っていい。

11月以降、東京エリアは落ち着いている
東京エリアの電力市場価格

 これに対して、関西エリアは11月に入って昼間価格が急上昇した。昨年より早く寒気が入ってきたとはいえ、夜間価格の上昇スピードも速い。

11月以降、関西エリアは急上昇
関西エリアの電力市場価格

 西日本全体が関西エリアと同様の値動きを見せており、このままだと西日本は暖房需要が大きくなる冬場の間、相当の高値混乱を招かないとも限らない。監視当局に注意を喚起したいという思いもあり、この原稿を書き起こした次第だ。

11月から新ルールが始まっているはずなのに

 電力・ガス監視等委員会は11月以降、大手電力の小売り部門による予備力確保に関して新たなルールを課した。新ルールは、2018年11月には確保した予備力の全量を市場に投入することを義務付けた。現在はそのゴールに向けて、大手電力各社に予備力投入を増やすよう求めている段階だ。

 新ルールの導入で大手電力の入札行動に変化は起きているのか。

 電力広域的運営推進機関が公表している日々の「最大需要予想」と「ピーク時供給力」、およびそれらから定義した「予備率予測」の7日移動平均をグラフ化してみた[予備率予想(%)={(ピーク時供給力/最大需要予想)-1}×100]。予備率予想は、大手電力各社の予備力の確保の仕方を反映したものと考えていい。

 東京エリアは、2017年度の当初から秋口まで予備率(予備率予想、以下同様)は15%を超えていたが、11月以降は15%を下回るようになった。新ルールに応じる姿勢が感じ取れる。

予備率は低下傾向
東京エリアの予備率予想の推移

大手電力の「絶対に負けない戦略」

 これとは対照的に関西電力の拠点である関西エリアは、11月以降も予備率が15%を超える状況が一向に改まっていない。

 12月に入って予備率が急低下しているが、これは本格的な冬の寒気(例年なら1月下旬の水準)が入ってきて、需要が急伸したことが主な理由だ。気温が下がっても関西エリアで供給力は目立って増加しておらず、従って市場投入量も増えていない。

予備率も高止まり
関西エリアの予備率予想の推移

 10月、関電は中部電力とともに過剰な予備力確保が監視委員会から指摘された。それを契機に監視委員会は新ルールを導入した。

 だが、データを見る限り、関電は新ルールの精神をくんでスポット市場に十分な予備力を供出する施策を未だ実施していない可能性が高い。

 加えて、市場関係者の間では「関電は市場への玉出しを増やしていないだけでなく、市場から調達する量を増やしている」とも言われている。供給力の大部分を握っている大手電力にとって、安い価格で市場から調達できる際には、自社電源を止めて市場調達に振り替えるというやり方は、いわば「絶対に負けない戦略」である。

 西日本エリアの価格に大きな影響力を持つのが関電と中部電の2社だ。

 ちなみに、2017年4月以降、予備率が15~20%と高かった中部エリアは、新ルールが適用された11月以降は減っている。中部電は新ルールに従っている模様だ。今回の西日本エリアの価格上昇は関電の入札行動に起因していると見ていいのではないか。

中部電は新ルールを守っている模様
中部エリアの予備率予想の推移

 一部の事業者の振舞いで、市場の価格水準が揺さぶられるような実態をどう考えたらいいのか。市場参加者は目に見えないリスクと戦わざるを得ない状況が続いている。

 これまでも指摘してきた通り、透明度の高い情報公開と厳格な監督行政は、市場活性化や自由化には絶対に必要なことだ。まして、新ルールが導入されたばかりの今は、その真価が問われるタイミングだ。

 いずれにせよ、西日本の電力価格が異常なのは明らかである。監視委員会には急ぎ事態を究明し、早急に対応をとることを求めたい。