かねて太陽光発電で問題視されてきた「事後的過積載」に政府が動きました。制度改正によって事実上、事後的過積載は禁止となります。今回の制度改正は、固定価格買取制度(FIT)が新制度に移行したことによるFIT認定の遅れとの関係で救済措置が用意されるなど、通常の制度変更では見られない対応もあります。西村あさひ法律事務所の川本周弁護士に、事後的過積載に関する新規制と、今回の制度改正から読み取れるFIT制度の行方に関するヒントを教えていただきます。

【質問1】「事後的過積載」とは何ですか。なぜ問題とされているのですか。

【回答1】「過積載」とは、太陽光パネルの出力合計が接続容量を超えている状態、すなわちパワーコンディショナーの定格容量を超えて太陽光パネルを設置している状態のことを指します。このような過積載のうち、FIT認定を受けた後で、接続容量を変更しないで太陽光パネルを増設することを「事後的過積載」といいます。

 今回の制度変更前は、事後的に太陽光パネルを増設しても、パワコンの定格容量の範囲内であれば、すなわち接続容量に変更がないのであれば、増設によって発電量が増えても、既設の太陽光パネルによる発電と同じ“過去の有利なFIT買取価格”の適用を受けることができました。

 FIT買取価格は、再エネ発電に要するコストを前提に設定されています。事後的過積載を行う太陽光発電所は、FITの設備認定を受けた時点よりも値下がりした、あるいは安価な太陽光パネルで増設している場合が大半です。この増設分についても、設備認定を受けた時点の高価な太陽光パネル価格を前提に設定された、好条件のFIT買取価格の適用を受けられる点を問題視する向きもありました。

【質問2】事後的過積載は今後どのように規制されるのですか。

【回答2】出力10kW以上の太陽光発電設備において、太陽光パネルの合計出力が3kW以上増加するか、あるいは3%以上増加する場合、認定済みの事業計画について「変更認定」を受けることが必要となり、買取価格が変更認定時の価格に引き下げられます。増設したパネル相当分だけではなく、FIT認定の対象となっている太陽光発電所全体の買取価格が引き下げになりますので、注意が必要です。

 また、太陽電池の出力を20%以上減少させる場合も同様に、FIT買取価格が変更認定時の価格に引き下げられます。今回の規制により事後的な過積載が制限されることから、事後の過積載を想定して最初に認定を受ける際の太陽電池の出力を多めに申請するケースが考えられるためです。出力の減少も変更認定が必要とすることで、実際に設置する太陽電池の出力は事業計画上の数値からマイナス20%未満の範囲に収めないと、買取価格が引き下げられることになります。

 なお、これらの規制は出力10kW未満の太陽光発電設備には適用されません。

【質問3】今回の制度改正は、前触れのない抜き打ちだったという声を聞きましたが・・。

【回答3】政府が事後的過積載を問題視し、何らかの手当てを講じようとしていたことは、これまでの経緯から明らかでした。

 例えば、2017年1月に開催された、経済産業省内の専門家会議(再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会)における議論では、事後的過積載の実態を調査し、変更認定の対象として買取価格の適用ルールを変更する必要があるか否かを今後検討するとしていました。

 資源エネルギー庁による再エネ関連制度のポータルサイト、「なっとく!再生可能エネルギー」に掲載されているFAQにおいても、これと同様の回答が記載されていました。

 また、3月14日に公表された再エネ特別措置法施行規則の改正などに関するパブリックコメントにおける回答でも、「過積載については、認定取得後に事後的にモジュール出力を増やした場合、より安価な設置コストで当初の調達価格(買取価格)のまま発電量を増やすことが可能であるため、国民負担との関係で問題ではないかと考えています」と指摘していました。

 その点で、今回の過積載規制は、ある程度、予期されたものであったといえます。

 もっとも関係者にとって、今回の制度改正は不意を突かれた面があったのも事実です。制度改正に関するパブリックコメントは7月6日に募集が始まり、「電子政府の窓口e-Gov(イーガブ)」のパブリックコメントに関するページに情報が掲載されました。

 通常、再エネ特措法や関連する政省令の改正案については、前述の「なっとく!再生可能エネルギー」のトップページに表示される新着情報にて、パブリックコメントの募集開始がアナウンスされます。ところが今回の改正案に関する意見募集の開始が「なっとく!再生可能エネルギー」の新着情報に表示されたのは、筆者の見る限り、募集開始から1週間以上が経過し、事後的過積載規制について業界紙が報道した後の7月14日の午後になってからでした。

【質問4】新たな規制はいつから適用されるのでしょうか。FIT認定の新制度への移行手続きとの関係で混乱が生じたとも聞いています。

【回答4】事後的過積載に関する新規制は、再エネ特措法施行規則の施行日、すなわち8月31日から適用されます。

 これより前に、以前のルールに則った手続き(基本的には事前届出)を適切に行っていれば、事後的な過積載であっても、FIT買取価格の変更はありません。また、既に適法に太陽光パネル増設の手続きを完了させた案件に対して、遡及的に価格引き下げを適用することはありません。

 ただし、今回の制度改正は、今年4月のFIT法改正に伴い、旧制度下のFIT認定を新制度へ移行する手続きが時期的に重なったため、実務上の混乱が生じました。旧制度下のFIT認定を、新制度下のFIT認定へと移行するためには、事業計画の提出と審査の手続きが必要となっていましたが、この手続きが完了しないことには、太陽光パネル増設のための事前届出もできなかったからです。

 しかも、FIT認定の移行の審査は、混雑により事業計画の提出から終了まで2カ月以上かかることもありました。改正前の制度に基づいて太陽光パネル増設のための事前届出を行おうとしても、FIT認定移行の手続きがネックとなって、新たな過積載規制が実施されるまでに間に合わないことが問題となりました。

 このような混乱を受けて、資源エネルギー庁は、7月20日と7月31日の2度にわたって、救済措置をアナウンスしました。

 FIT認定の移行手続きとしての事業計画を提出している事業者については、移行の審査が完了していなかったとしても、今回の制度改正が実施される前に太陽光パネル増設に関する届出を行うことができるとしたのです。この場合、届出の受理日は移行手続の完了後の日付けとなるものの、届出の書類が施行日の前営業日の営業時間中に所定の届出先に到着していれば、制度改正前の届出として扱われるとしています。

 受理日より前に届出の効力を認めるというイレギュラーな対応により、FIT認定の移行事務手続きの遅れによる不利益が生じないよう救済措置を講じたといえます。

【質問5】政府の今後の再エネ政策を見通すうえ、今回の制度改正は何か示唆しているのでしょうか。

【回答5】事後的過積載を規制することの正当性の根拠として、政府は「国民負担」という言葉を使っています。FIT制度は再エネ賦課金を通じて電気の最終需要家が支えています。制度を経済的に支える国民の理解が、FIT制度の存続の上で不可欠です。

 事後的過積載の問題は、FIT買取期間の最大20年間にわたり、太陽光発電の再エネ賦課金の金額に影響するものであり、早急な対応が必要でした。今回の制度変更は、「FIT制度を支える国民の経済的負担を無視できない」という姿勢を政府が改めて示したと言えるでしょう。

 この「国民負担」というキーワードに関連して、今後注目されるのがバイオマス発電に対する規制のあり方です。「一般木質バイオマス」については、FIT買取価格が2017年度後半から切り下げられることになっており、今年度上半期にFIT認定の駆け込み申請が数多くあったようです。

 これらのバイオマス発電案件がすべて運転開始に至れば、必要になる再エネ賦課金の水準が政府の想定を大きく超えることになってしまいます。バイオマス発電は、FIT制度の設計や運用に新たな変更が行われないか、引き続き注意が必要な分野だといえるでしょう。

* 本稿は執筆者の個人的見解であり、その所属する法律事務所又はクライアントの見解ではありません。
川本 周(かわもと・あまね)
西村あさひ法律事務所・弁護士
2006年弁護士登録。西村ときわ法律事務所(現西村あさひ法律事務所)入所。電力ガス・プラクティスチーム所属。2013年から2年間、日系商社のロンドン子会社にて発電プロジェクトに従事。業務分野はプロジェクトファイナンス、証券化/流動化、電気・ガス事業など。
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