バイオマス発電の固定価格買取制度(FIT)の認定量が、2017年3月末時点で政府の2030年の導入見込量の2倍を超えました。経済産業省は9月末から、翌年度のFIT条件を議論する会合を再開。毎年恒例の委員会ですが、今年はバイオマスが主題です。西村あさひ法律事務所の佐藤長英弁護士に、バイオマス発電のFIT見直しの方向性を読み解いていただきます。

【質問1】バイオマスの過剰認定はなぜ起きたのですか?

【回答1】木質バイオマス発電の買取価格の変更が原因です。2016年度まで一般木材等燃焼発電(一般木質バイオマス発電)は一律24円/kWhでした。ところが、2017年度下半期(10月1日)以降は発電出力2万kW以上の区分が新設され、21円/kWhに引き下げられました。

 一部報道によれば、2016年度末に約1100万kWの駆込み申請があり、FIT認定済みの設備と申請中の設備を合わせると約1600万kWに達したとのことです。駆込み申請の9割以上を一般木質バイオマスが占めたとみられます。これまでのバイオマス発電の認定ペースを見れば、今回の駆け込み申請がいかに多かったかは一目瞭然です。

2016年度末の駆け込みでバイオマスが急増
バイオマス発電のFIT認定量(出所:「再生可能エネルギーの現状と本年度の調達価格等算定委員会について」 第30回 調達価格等算定委員会、配布資料1、33頁から一部抜粋)

 木質バイオマス発電の24円/kWhは、出力規模5700kW・発電効率26%の発電所を想定して算定したものです。発電所の規模が大きくなれば発電効率は高くなります。調達価格算定委員会は新区分を設けるに当たり、運転開始間近の発電所にヒアリングを実施。出力2万kW以上の大規模案件は発電効率を32%とし、調達価格を21円/kWhに引き下げたのです。昨年12月のことです。

 ただし、バイオマス発電は、地元調整に時間がかかる電源であり、地元自治体と最終調整に入っている案件などに配慮して、買取価格が下がる出力2万kW以上の発電所については、2017年度上半期の半年間に限って現行価格の24円/kWhに据え置く経過措置を用意しました。4月1日の改正FIT法施行による制度変更も重なり、2016年度末の認定申請が殺到したのです。

 駆け込み申請によって、バイオマスは過剰認定状態に陥りました。政府の「長期エネルギー需給見通し」は、2030年のバイオマス電源比率を3.7%~4.6%(394億~490億kWh)としています。この比率をFITが想定している設備利用率を用いて設備容量に換算すると、602万~728万kWとなります。

 今年3月末時点での認定済み設備容量1242万kWと比べると、2030年度の導入見込量の2倍を超えているのです。さらに、認定申請中の設備容量が今年3月末時点で約380万kWもあります。このうち、2017年4月~9月末の期間中にFIT認定を受けたバイオマス発電の設備容量は約131万kWです。バイオマス発電の申請や認定は過剰と言わざるをえません。

長期需給エネルギー見通しの倍を超えた
西暦2030年度の電源構成(出所: 「再生可能エネルギーの現状と本年度の調達価格等算定委員会について」 第30回調達価格等算定委員会、配布資料1、5頁から一部抜粋)

【質問2】バイオマスの過剰認定は明らかなのですね。経産省はこの過剰認定状態をどうやって収束しようとしているのですか。

【回答2】一部報道によれば、経産省はバイオマスの新規FIT認定の“制限的運用”を検討しているようです。既設の石炭火力発電所における木質バイオマス混焼案件や、石炭・石油火力などの既設の火力発電所を木質バイオマス専焼に変更する燃料転換案件の新規FIT認定について、経産省は相当に慎重になる可能性があります。

 FITの買取価格は再エネ発電事業者が適正利潤を得られるように設定されています。既設火力の燃料にバイオマスを利用してFIT認定を受ければ、事業性が向上し発電設備の延命につながります。しかも、FITの買取期間終了後に、燃料が割高なバイオマス発電では採算が合わず、再び石炭火力として運用するようなことがあれば、FITの趣旨に反します。

 したがって、経産省は今後、「設備投資を伴わないバイオマス案件への政策的補助は制限する」という立場を明らかにする可能性があるのではないかと見ています。

自立を促すために「燃料費は支援しない」

 さらに経産省が、新設火力のバイオマス発電が設備投資を伴うにもかかわらず、FIT認定を制限的に運用する方向性を打ち出すとしたら、それは賦課金による国民負担の増大を防ぐため「FITは燃料費を補助しない」という考えに立つことを意味します。

 FITの趣旨に則れば、FIT期間終了後は再エネ電源として自立しなければなりません。燃料費がかからない太陽光や風力は、FITで初期投資の支援を受けることで、十分に自立可能です。ところが、バイオマス発電は、発電コストに占める燃料費の割合が、専焼で約7割、混焼で約4割に上ります。FIT期間中に燃料費の低減策を講じる必要があります。

 自立できない再エネ電源をFIT制度で支え続けることは、法の趣旨に合わないため、FIT制度の見直し余地が出てきます。既に調達価格等算定委員会(第30回)の配布資料でも論点の1つに挙げられています。自立を促進するために、「FIT制度は燃料費を支援しない」という政策が検討される可能性がありそうです。

 なお、既にFIT認定を取得済みのバイオマス発電案件が、過剰認定を理由に認定を取り消されることはありません。もともとFIT制度は、買取価格のレベルと設定時期の調整により再エネ電源の導入量・導入速度をコントロールする政策です。事後的に過剰認定状況が判明したこと自体は、認定取消事由として法定されていません。

【質問3】木質バイオマスのFIT制度は、来年度に向けてどういった変更になりそうなのですか。

【回答3】既に木質バイオマスは過剰認定の状態ですから、大枠では新規認定を抑制する方向で制度改正が行われるでしょう。もっとも、バイオマス発電は他の再エネ電源と異なり、燃料の価格と量の両面で買取期間(20年間)にわたる安定的供給策を講じる必要がある火力発電です。資金調達を含めて案件組成の難易度が相対的に高いといえます。

 そのため事業者団体からは、一般木質バイオマス発電の実際の導入量は認定量の2割程度の180万kW(既設を含めて220万kW)にとどまり、2030年の導入見込み量である400万kWには届かない可能性が、調達価格算定委員会で指摘されています。「設備規模」「専焼か混焼か」「既設か新設か」「燃料」などの分類ごとに、バイオマス発電の導入量の最新の実態を踏まえて買取価格の水準を決めることになります。

 今後の制度を読み解くポイントは6つあります。まず第1のポイントは、「大規模区分の買取価格の引き下げ」です。

 木質バイオマス発電所の大規模化は、発電効率を高め電源コストの低下に役立つものの、バイオマス燃料の需給逼迫や価格上昇リスクが顕在化した場合に、事業継続への影響が大きいという問題があります。そこで、大規模化に一定の歯止めをかけるべく、大規模区分の買取価格はさらなる引き下げが検討されそうです。

 大規模化に歯止めをかける方法としては、太陽光発電で導入した入札制度などがあります。ただ、調達価格算定委員会では、バイオマス発電について入札制度の導入検討への言及はなく、運転開始期限の設定要否が論点として指摘されているにとどまります。

バイオマス混焼の認定条件は厳しくなる

 第2のポイントが、「混焼区分の創設」です。これまでバイオマスの買取価格の算定は、専焼プラントを前提にしていました。ただ、石炭・バイオマス混焼は、バイオマス専焼よりも発電コストが安価であることが分かっています。そこで、混焼比率の違いによる発電コストの把握が必要だと指摘されています。

 バイオマス混焼は、CO2排出量の削減手段であり、省エネ法の発電効率ベンチマーク達成手段でもあることから、FITによる買取対象から外れることはないでしょう。他方、石炭火力発電所にバイオマス燃料を使えば、燃料費は増加します。こうした理由から、新たに混焼区分を創設し、バイオマス混焼比率が高くなるにつれて買取価格を低く設定するのではないでしょうか。

 そして第3のポイントが「既設改造区分の創設」です。既設改造と新規建設とを区分して取り扱う可能性は、「平成29年度以降の調達価格等に関する意見」(2016年12月公表)で示唆されています。既設改造と新規建設のコスト実態を把握する必要性が言及されているのです。

 2018年度以降の買取価格の設定に当たっては、既設改造と新規建設とを区分したうえで、既設改造に対して抑制的な買取価格・買取期間とすることが検討されるでしょう。バイオマス混焼のFIT認定条件は、厳しくなりそうです。

 第4が、「燃料を安定的に調達できるかどうか」です。FITの20年の買取期間中、バイオマス燃料を安定調達できるか、その調達の持続可能性は担保できるかが非常に大きな問題です。国内材は農林水産省のガイドラインに基づき森林の持続可能性およびサプライチェーンの確認が行われています。今後は輸入材についても、同様の対応が求められそうです。

 燃料別では、一般木質バイオマス発電の専焼案件(バイオマス比率90%以上)のうち、件数ベースで約5割、出力ベースで約4割がパームオイルを含んでいると報告されています(調達価格等算定委員会第30回)。

 パームオイル、森林減少など環境面での影響に加えて、違法操業の問題が指摘されており、合法性の確認方法が調達価格等算定委員会での検討事項とされています。2017年5月20日に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称「クリーンウッド法」)による合法性の確認方法に留意する必要があります。

 第5の論点は「熱電併給への支援策」です。木質バイオマスのエネルギー利用効率は、発電のみでは20~40%程度にとどまりますが、燃焼過程の排熱を使った熱電併給によって、電気と熱を合わせた総合エネルギー効率を80%まで高めることができます。

 欧州には、総合エネルギー効率60%以上のバイオマス発電をFIT対象にし、熱電併給へ誘導している国もあります。「平成29年度以降の調達価格等に関する意見」では、自立の観点から熱電併給を促進する支援策の検討が重要と言及しています。

 もっとも、発電所の規模が大きくなれば発電効率が高くなる一方で、大規模発電所の近隣に大規模な熱需要があるケースは限られるのが実情です。熱電併給に対して買取価格の上乗せをするかどうかは、調達価格等算定委員会の議論を注視する必要があります。

2018年、2019年の事業化決定は要注意

 そして、第6のポイントが「複数年度の買取価格設定の見直し」です。バイオマス発電はリードタイムが長い電源なので、事業化の予見可能性を高めるべく、2016年改正FIT法に基づき、複数年度(平成29年度~平成31年度の向こう3年間)のFIT買取価格を固定しています。ただ、この点は見直しの可能性があります。

 調達価格等算定委員会(第30回)の配布資料の中で、今年度のバイオマスの論点のひとつとして、国際情勢や導入量を踏まえてあらためて向こう3年間のFIT買取価格につき「既決事項との関係を整理」しながら検討を進めると記されています。2018年度と2019年度に事業化決定には留意が必要です。

 燃料調達や資金調達に問題のある案件は、認定の失効・取消しにより脱落していくでしょう。認定取得済みのバイオマス発電のうち、どれだけ稼働・導入にまで至るのかを見極めつつ、調達価格等算定委員会の議論を注視する必要があります。次回の調達価格等算定委員会(第32回)の開催予定日は11月21日です。

【質問4】FIT認定を申請中のバイオマス発電案件は、現行のFIT関連法令の枠組みのもとでFIT認定を受けることができるのでしょうか?

【回答4】個別案件の認定可否を予測するのは難しいのですが、根本的な判断基準は「熟度が高い再エネ発電事業計画だけが買取価格を確定できる」というものです。ここでいう「熟度」とは発電事業の実行可能性を意味します。

 FIT認定の要件として、「接続申込書面の受領時」が「接続契約の締結」に変更されたのがその良い例です。同じ考え方に基づく変更は最近も行われています。

 8月31日に公布・即日施行された改正FIT法施行規則の主旨として、太陽光の事後的過積載の抑制に注目が集まりましたが、調達価格の変更を伴う再生可能エネルギー発電事業計画の軽微でない変更事由として、送配電事業者との「接続契約の主要な事項の変更」が追加されています。

 何が「接続契約の主要な事項の変更」に該当するのかについての解釈・運用は、資源エネルギー庁のWebサイト「なっとく!再生可能エネルギー」に掲載されている「平成29年8月31日公布・施行のFIT法施行規則・告示改正のポイント」および「変更内容ごとの変更手続の整理表」に詳細に説明されています。

 いずれも、根底にあるのは、「熟度が高い再エネ発電事業計画だけが買取価格を確定できる」との考え方です。裏を返せば、「接続契約の再締結は、その再エネ発電事業計画の熟度の低さを象徴する事由であり、買取価格を確定するには相応しくない」というのが、改正FIT法施行規則の趣旨なのです。

 根本的な制度の考え方を理解しておけば、制度変更の方向性はある程度の予測がつくものです。政策変更が不意打ちとなることを防ぐ上でも、制度の趣旨をきちんと理解していきましょう。

【質問5】そもそも、再エネ電気は、限界費用(燃料費などの追加コスト)がゼロであることから、FITによる政策的支援を受けているのではないのですか。燃料費が必要なバイオマス発電は、なぜ再エネ電気なのですか?

【回答5】太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの再エネに共通する特徴を、FIT法は、非化石エネルギー源であって「電気のエネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」(FIT法2条4項6号)と捉えています。

 電気事業の根源的な政策目標である3E(安定供給・経済効率性・環境適合)の観点に立ち返って考えみると、再エネの「電気のエネルギー源としての永続的利用可能性」という特徴は、安定供給と最も関係するものです。

 長期エネルギー需給見通し(2015年7月公表)の中で、バイオマスは地熱・水力とともに、自然条件によらず安定的な運用が可能な再エネとして、ベースロード電源である「原子力の代替となる再エネ」位置付けられています。

 長期エネルギー需給見通しにおける再エネの導入量は、再エネの最大限導入とFIT賦課金という国民負担の抑制が両立する範囲内で、まずは地熱・水力・バイオマスを物理的限界まで導入することで原子力を代替するとしています。その後に、再エネを含めた全体の電力コストが9.5兆円に達するまで自然変動再エネ(太陽光・風力)を拡大することとされているのです。

 霞ヶ関のFIT政策立案者にとって、「バイオマスは原子力代替」と位置付られているのを認識しておくことは、今後の政策動向を予測するうえでも重要です。つまり、原子力の再稼働状況が、バイオマスの導入量を規定する側面があるということです。

* 本稿は執筆者の個人的見解であり、その所属する法律事務所又はクライアントの見解ではありません。

佐藤 長英(さとう・ながひで)
西村あさひ法律事務所・弁護士
電力・ガスプラクティスチーム。1995~96年日本輸出入銀行出向。2005~07年日本政策投資銀行嘱託。2008~13年国際協力銀行嘱託。取扱業務分野はプロジェクトファイナンス、PFI/PPP、電力・ガス。