短期間のうちに大トラブルが頻発

 ITをおろそかにして、強いエネルギービジネスは成立しない。そのことを改めて意識合わせするため、今回は、ITに翻弄されITで混乱した電力業界の1年を振り返っておきたい。

 一連のトラブルの“先陣”を切ってしまったのは、電力安定供給の司令塔を担う電力広域的運営推進機関(広域機関)だ。

 全面自由化を翌日に控えた2016年3月31日、基幹系システム「広域機関システム」の通信プログラムを午後5時に起動させたところ異常が発生。日本卸電力取引所(JEPX)の1時間前市場における約定処理に不可欠な入札情報を、JEPXとやり取りできなくなった。そのため実受給当日の電力調達を想定して開設されたばかりの同市場の取引は、いきなり約8時間にわたって全面停止した。

 このトラブルの数日前には、実受給前日に確定した連系線利用計画を変える「通告変更」の受付けを停止。1時間前市場において、連系線を介してエリアをまたぐ電力取引ができなくなった。広域機関システムに実装予定だった一部機能の開発が間に合わなかったためだ。

 広域機関は約1カ月遅れで当該機能を動かし始めたものの、稼働後ほどなく新たな不具合が顕在化し、連系線を利用する電力の取引をすぐに再停止した。

主なトラブルだけでも、こんなにある
電力小売り全面自由化に端を発したITシステムのトラブルの例 出所:栗原雅