新電力は電力サービスに参入する際、契約管理や料金計算に用いるCIS(顧客情報システム)を導入すると共に、電力需要を予測して供給計画を立てる需給管理システムを整備。申し込みの受け付け機能や、月々の電気料金と使用量の確認機能などを持つポータルサイトも用意してきた。それでも各種システムでカバーしきれず、人手による作業を余儀なくされている業務が、新電力の現場にはまだ多く残っている。

 新電力が突貫工事で全面自由化に間に合わせたシステムは、「CISや需給管理などいくつものシステムがバラバラに動くつぎはぎ状態になっている」。複数の新電力のシステム導入を支援してきたコンサルタントは、こう話して続ける。「初期の細かい不具合などはさすがに解消してシステムは安定稼働している。だが、システム間でデータ連携できていない処理が残っており、多くの新電力で人手によるデータの多重入力が発生している」。

メガバンクの業務改革で脚光浴びるロボット

 システム化の対象から漏れたまま、いつまでもシステムの機能として実装されずに積み残された人手による事務処理を、いかに効率化するか。

 この課題を解くカギとして、にわかに脚光を浴び始めているのが、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ぶソフトウエアツールである。RPAツールは、人に代わってパソコンを使う事務処理を遂行することから、ソフトウエアロボットやデジタルレイバーとも呼ばれる。

 最近、メガバンクが競うように公表した業務改革に関する報道を受け、RPAに注目し始めた新電力関係者も多いだろう。

 みずほフィナンシャルグループは1万9000人分、三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分、三井住友フィナンシャルグループは4000人分の業務量削減に向けて動き出した。各社ともRPAツールを、業務改革を成し遂げるための有力な道具立ての一つに位置付け、活用を推し進めている。

 RPAツールは、定型化された業務の処理手順を覚え込ませることで、同一の作業を自動で実行する。社内システムのデータベースを検索し、書類作成に必要な顧客の氏名や住所のデータを表計算ソフトExcelに入力する作業があった場合、最初にいったん人がパソコンで実際に処理してみせる。するとパソコンもしくはサーバーで動くRPAツールが、どのデータをExcelのどこの項目に転記するかを記憶し、同じ作業であれば100件でも1000件でも機械的に一気に処理するようになる。

 メガバンクが掲げた業務量削減の数値目標はどれも大きい。そのため、「RPAは大手企業が大規模に社内展開するソフトウエアのように捉えられている節がある。しかし、中堅中小企業が小規模に使っても十分に効果が得られる」。こう語るのは、ITベンダーやコンサルティング会社、ユーザー企業など30社近くが加盟する日本RPA協会の代表理事、大角暢之氏だ。大角氏は「BizRobo!(ビズロボ)」というRPAツールを開発・提供するRPAテクノロジーズの社長でもある。

 同社のBizRobo!は三菱UFJ銀行や日本生命保険といった大手から、中堅中小企業まで、国内100社ほどが採用している。そしてBizRobo!で開発した4000台以上のソフトウエアロボットが、全国各地の企業で人に代わって事務処理をこなしている。

 その中には、月次で実施する社内アンケートの結果を集計して報告書としてまとめる業務の所要時間を、劇的に削減したところもあるという。従来は1人の社員が2日ほどかけて約700人分のアンケート結果を基に報告書を作成していたが、作業を覚えさせたBizRobo!の導入後は10分程度で完了できるようになったそうだ。1日の就業時間が8時間だとすると、ソフトウエアロボットを活用したことで、作業効率が100倍近くに高まった計算になる。

 この成果を、対象がたった1人の業務に過ぎず、業務量の削減効果もせいぜい月に16時間足らず、と捉えるのは得策とは言えない。「システム化の対象から漏れたままになっている業務の中には、システムに機能を実装するにしては業務量が少なく大きな効果が見込めないとして見送られてきたものが多い」(大角社長)からである。それらを自動化して作業効率向上の成果を積み上げれば、全体として大幅な業務量の削減が期待できる。