廃炉や賠償の費用は倍増、資金計画の前提は崩れているが・・

 東電グループには、2014年1月に経済産業大臣が認定した「新・総合特別事業計画」(以下、「新総特」)がある。新総特には、2023年3月期までの資金計画も含まれており、今回発行した社債の償還期限までの期間がカバーされてはいる。

 しかし、資金計画の前提となる新総特は、近々大幅な改訂が予定されている。福島第1原発事故に伴う賠償・除染・廃炉の費用の合計が、現行の新総特で見込んでいた11兆円から22兆円へと倍増したためだ。

 現在の新総特の策定後に、各費用が当初想定を上回ることが分かってきた。東電自身、2016年7月に「激変する環境下における経営方針」を発表し、政府に対して「当初見込みを上回る賠償費用の負担のあり方」について方針を明らかにするよう求めた。これを受けて経済産業省は「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)を設置。昨年10月から12月まで、有識者による議論が行われた。主たる議題は、当初想定の約2倍に膨れ上がった原発事故に伴う費用の手当てと、東電の経営の在り方であった。

 東電委員会は2016年12月20日、「東電改革提言(案)」を発表した。これを受けて、東電グループ及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)が、新総特の改訂作業を進めている。3月14日時点で新しい新総特は発表されておらず、改訂・認定の時期は4月頃になるとも予想されている。

 新総特の前提となっている事故関連費用が大幅に増大するため、改訂によって資金計画も大幅に変更されるだろう。従って、今回の起債に際して、現行の新総特に基づいて社債の返還について投資家に説明することは、誠実な態度とは言えない。社債投資の原則から考えれば、近々予定されている新総特の改訂・認定を待ち、その新しい事業計画・資金計画を投資家に説明して理解を得た上で、社債を発行すべきであった。

 こうした背景から、東電PG債の購入を見送った機関投資家もいる。一方で、積極的に購入を決めた投資家は少なくなかった。前述のように、当初の発行予定額に収まらないほどの人気を博したのは、このためだ。今回の状況を、どのように読み解くべきであろうか。