JERAは福島リスクを遮断できない

 しかし、信用力分析は、「究極的には誰がその会社(事業)の責任を負うのか」を重視するのが基本だ。

 共同事業の相手方である中部電にとって、JERAに移管した燃料・火力事業が不可欠のものである以上、東電の信用力が当てにできない状態になれば、共同事業体の債権者は中部電のサポートを期待する。また、東電本体の債務返済能力が危ぶまれる場合に、東電グループ内に経営状況が比較的良好な事業体があれば、共同事業体の株主間の配当ルールを踏み超えて、共同事業体から東電本体への支援が求められることは、充分にあり得る。

 実際に、昨年の東電委員会でも、東電の賠償・廃炉費用の大幅な拡大を受けて、委員からJERAによる福島への貢献が改めて求められるという場面があった。民間企業として利益処分の自由度を確保するという合意の下で発足した経緯があるにも関わらずだ。今回の新々総特に基づく送配電事業と原子力事業における共同事業体に関しても、東電委員会におけるJERAのような議論が将来なされる可能性がないとは言えない。

 それは、東電が純粋な民間会社ではないからだ。政府が出資する原賠機構が東電の議決権の多くを持っており、政府の意向によりルールが変更される可能性を排除できない。しかも、東電の経営に対する国の関与は長期化することが予想される。東電委員会の議論を経て、大幅に増額する見込みの廃炉費用の管理を、政府が監督する仕組みを導入することが決まったためである。

 なお、電力の小売事業においても、東電は他社との共同事業体を設立する意向を示している。だが、燃料・火力発電事業、送配電事業、原子力事業とは異なり、小売事業の事業資産の規模は限定的である。

 従って、事業資産を双方が持ち寄って、設備投資を重ねることで一体として運用することになる可能性は低い。東電にとってもパートナーにとっても、「共同事業をいつでも解消できる」という選択肢を持ち続けることになる。つまり、どちらかが仮に苦境に陥っても、相手方が支援を余儀なくされることはないだろう。

政府の長期関与、パートナー企業にはプラス

 一方で、実質的に政府系企業となった東電と提携し、主要事業を一体化することが、パートナー企業にとって将来の大きなメリットにつながる可能性もある。

 ここまで、現状の信用力水準に基づき、東電は共同事業体のパートナーよりも信用力が低いという前提で議論してきた。信用力を示す格付けを見ても、原発事故の責任を負う東電の格付けは、他の電力会社よりも明らかに低い水準にある。

 しかし、格付けは「長期格付け」であっても、およそ3年から5年先までをスコープとして判断されているものだ。電力・ガスシステム改革が進み、規制のあり方を含めて事業環境が大きく変化する中で、3~5年以上先のエネルギー各社の競争力と市場地位を正確に見通すことは難しい。

 また、経営への政府の関与が強まることは、一般にはその企業の信用力水準が政府に近づくことを意味する。つまり信用力上は、ポジティブに働く。

 今回の新々総特の策定についても、「賠償・廃炉費用の拡大に対して政府が臨機応変に東電を支援している」と見ることも可能だ。そうであれば、東電の信用力評価において、政府の関与はポジティブな事象と捉えられる。将来、廃炉費用が再び大幅に増大することがあっても、その時点で政府が新たな支援策を講じると考えることもできるだろう。