新電力が競合相手と見なしているのは、同じ小売電気事業者である東電EPである。東電EPが自身のコスト削減努力などで実現した安値なら、文句なく正当な価格だ。だが、仮に発電部門や送配電部門までが一体となって安値を支えている構造があるとしたら、電力自由化が理念に掲げるイコールフッティング(公正・公平)であるべき競争環境に問題があることになりはしないか。

 そうした構造があるのか、ないのかは本来、電力・ガス取引監視等委員会がしっかりチェックすべきだが、ここでは公開情報をベースに可能な限り迫ってみたい。

東電EPより利益の減少幅が大きい東電F&P

 福島第1原子力発電所事故を契機に事実上、国の管理下に入った旧東電は、賠償責任を果たす観点からも成長戦略として、他の大手電力に先駆ける形で2016年4月にホールディングカンパニー制に移行。持ち株会社の下、送配電部門、発電部門、小売部門を分社化した。それぞれの部門が利益の最大化を目指すのが目的だ。

 東京電力グループは4月に発表した2017年3月期決算でも黒字を計上し、2014年3月期以降、4期連続最終黒字を達成した。

4期連続最終黒字を達成した
表1●東京電力の売上高・経常損益の推移

 現在の東電グループは、持ち株会社の東電ホールディングス(HD)、そして東電EP、燃料・火力発電部門の東電フュエルアンドパワー(F&P)、送配電部門である東電パワーグリッド(PG)といった主要な4つのセグメント(基幹事業)で構成される。

 これに合わせて、2016年3月期と2017年3月期の損益計算書(P/L)は同じセグメントの定義に基づいて区分けされている。2カ年の基幹事業会社のP/L比較は表2の通りだ。福島第1原発を抱える東電HD以外は、いずれもこの2カ年にわたって黒字を計上している。

東電F&Pの利益減少の大きさが目を引く
表2●2016年3月期と2017年3月期のセグメント情報

 セグメント情報において目を引くのは、東電F&Pの利益が2016年3月期の2766億9000万円から2017年3月期は532億2800万円と、大きく2200億円程度も落ち込んでいることである。一方で、東電EPの利益は、1007億5400万円から747億6800万円と、2016年3月期から2017年3月期にかけて減ってはいるものの、減少幅は250億円程度と東電F&Pに比べて緩やかな水準にとどまっている。

 また、東電HD、東電F&P、東電PG各社の内部売上高は外部売上高と比べて明らかに大きい。つまり、東電EPが、東電HD(原子力と水力)と東電F&P(火力)が発電した電気の大半を引き取り、東電EPは規制事業である東電PGに対して託送料金(ネットワーク使用料)を支払う構造となっている(図1)。すなわち、東電グループ基幹子会社の利益水準については、グループ内取引が重要な決定要因となっている姿が確認できる。

グループ内取引の比重が圧倒的
図1●東電グループにおける社内外取引の構造