過去の延長線で電力システム改革を推進することより、将来のあるべき姿から今を見つめ直すべきだ。戦後の高度経済成長下では是とされた電気事業法は、いずれ自由化や市場化に沿った姿で見直す時期がくるだろう。

 一方で、既に日本経済は、電力需要が伸びない低成長経済が定常状態となっている。市場の公正な競争を通じて有用な電源を選別し、余剰の電源は見直されるタイミングにきている。

 「安定供給」を声高に叫ぶあまり、老朽化して効率の悪い電源を保有し続けては、将来の需要構造や需要家ニーズにマッチしない電源を日本社会が抱えることになりかねない。そうなれば無用な国民負担を強いることになる。需要が伸びない低成長下においては、原子力発電の全停止リスクや、拡大する再生可能エネルギーの不安定な発電の調整コストの問題に加えて、国民に支持される火力発電の最適ポートフォリオをきちんと検討すべき段階に入ってきていると言えよう。

電気事業の法的枠組みも見直す時期

 市場が正常に機能するようになれば、市場価格が適正なシグナルを発信することになり、その結果、市場参加者の競争を通じた安定的な需給運営が担保されることになる。つまり、市場には需給調整機能を備える側面はあるものの、本来的な役割は、需給均衡点で価格が決まり、それがシグナルとなって当日の電力需要や供給が調整されるところにある。

 これだけ需要が落ち込み、原子力が再稼動し、大量の再エネが導入され、供給力があり余っている状況では、市場価格は基本的に限界費用ベースで決まることが恒常化すると予想される。そうした環境下でも需要家ニーズに真摯に応えられるビジネスモデルが、これから求められる電気事業者像であり、社会の姿だ。

 電力自由化やシステム改革の推進と並行して、戦後成長期における電力の安定供給を支えてきた電気事業法の役割や位置づけを見つめ直し、新たな枠組みを根本から整備すべき時期がきていると認識して取り組みを始める必要があろう。
 
 いま一度、「安定供給」と、大手電力と新電力が同じ条件で競争できる「イコールフッティング」のあり方を真剣に議論すると同時に、広く電気事業の法的枠組みを見直す時期にきているのではないだろうか。

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