再生可能エネルギーの占める割合を2050年までに60%に引き上げるなど大胆な目標を掲げて2010年に始まったドイツのエネルギー戦略“Energiewende”(エネルギー改革)。世界各国が自国のエネルギー政策の手本にしようと注目してきたこのドイツの国策が足踏みしている。
ドイツのエネルギー改革は再エネ導入比率のほか温室効果ガスの削減や省エネについて、2020年から2050年まで10年ごとに数値目標を定めるなど、着実な目標達成を目指したものだった。
しかし、多くの資金を投入したにもかかわらず、現時点(2017年末)までの推移では、2020年目標を達成することすら難しし状況にある。
これは温暖化対策がいかに困難であるかを示している。しかし、温暖化対策と一体である脱化石燃料は、近い将来、安価な石油に頼るのが難しくなると見込まれる中、人類が避けることのできない必達の課題である。ドイツの政策の停滞の原因を究明して、今後の日本のエネルギー政策の策定に役立てる必要がある。
IEA(国際エネルギー機関)をはじめとして、近年、多くの研究が2020~30年頃から石油生産量は減少し始めると予測している(「採算性低下が原因で石油生産は減衰する」参照)。石油は今から20~30年後にはほとんど利用できなくなるおそれがある。
加えて、COP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)においては、2050年までに化石燃料の利用について50~80%の削減を目指すパリ協定を世界の多くの国が合意した。
これら2つの制約により、石油に大きく依存してきた人類は脱石油時代へと移行しなければならなくなった。
今後、石油の代わりに我々はどんなエネルギーを使うことになるのか。これが最大の課題である。
2050年、自動車の“燃料”も再エネ電力
まず、乗用車用燃料から石油代替エネルギーが決まる。
石油の60%以上が運輸交通部門で消費されており、内訳では自動車による消費が最も多い。脱石油の影響を一番大きく受けるのは自動車である。
自動車技術会は「2050年 自動車はこうなる」を2017年5月に刊行した。これは日本の自動車技術の“総本山”が検討を重ねた結果と言えるものだ。
そして、同書は将来の自動車用の代替燃料について、再エネ電力がもっとも有力であると結論づけている。石油が使えなくなれば、ほかに代替可能な液体燃料は見つからない。だから、これまで技術を積み重ねてきた内燃機関ではなく、蓄電池とモーターで駆動する方向しかないというのがその理由である。
将来の自動車を駆動する「燃料」が「電力」になる。電力は既に多くの用途で世界に広く利用され、電力供給のインフラも広く行き渡っている。将来の石油代替エネルギーは、「CO2を出さない再エネ電力」以外には考えられない。
上記のような検討に基づき、既に世界では石油代替エネルギーとして再エネ電力の開発に向けた動きが活発になっている。再エネの中でもとりわけ、太陽光発電や風力発電の進展が華々しく報じられている。
ところが、世界に先駆けて太陽光発電や風力発電を推進してきた欧州において、種々の問題点が提起され、将来に向けた懸念が指摘され始めている。「太陽光は幻想のエネルギー」と指摘する報道すらある(*1)。
・“How clean is ‘clean energy’? Renewables cannot solve the global crisis”, by Saral Sarkar, INSURGE intelligence, Jul 27, 2017
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