ビジネス再開の動きが広がるなかで、新型コロナウイルスの感染を防いだり、ビジネスのリスクを低減したりするソリューションの提供が活発になっている。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除から1ヵ月以上が過ぎ、オフィスや商業施設などの経済活動が再開しつつある。その一方で、「第2波」を懸念する声も聞かれる。このような状況のなか、企業ではさまざまな感染防止策に取り組んでおり、また感染防止ソリューション自体を新たなビジネスとする企業も現れている。今回は、特にAI(人工知能)やロボットの活用など、特徴的な感染防止策を導入または提供する企業を紹介する。

AIカメラを活用した密集・発熱検知ソリューション

 AIカメラを活用したソリューションでは、会議室などの狭い空間に一定数以上の人数が入るとアラートを発する密集検知や、サーモカメラで発熱している人を発見すると通知する発熱検知などが開発された。顧客企業向けにソリューションを提供するとともに、自社導入するケースも多い。

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、ネットワークカメラを活用して執務エリアの密集度や会議室の入室人数をモニタリングする「オフィス密集アラートソリューション」の提供を開始した。社員食堂などを含む広範囲にわたるオフィス運営で、管理部門による一括モニタリングが可能になり、業務の負担を軽減できる。

 会議室ごとに入室人数を設定し、その人数を超える数を検知した場合、スピーカーやパトライト、メールで通知する。スピーカー音を好みの音に設定したり、メール通知によるアラートを管理者や会議室予約者の複数人に対して発信することも可能。また、ビデオ管理ソフトウエアを用いて、複数台のカメラ映像を一元的に遠隔モニタリングできる。

 専用オプションを使用することで、個人を特定できないシルエット表示で、出席者や在籍者のプライバシーを保護しながら運営できる。入室人数の推移をグラフ表示にすることも可能。新型コロナウイルス対策のほか、予約のキャンセル漏れで空いた会議室や執務エリアの状況などをリアルタイムでモニタリングすることで、オフィススペースを有効に活用できるようになる。キヤノンMJでは、自社内にも同ソリューションを導入し、執務エリアや会議室、応接室の定員を通常時の50%で運営する目標を掲げている。

「オフィス密集アラートソリューション」の入室人数カウント(左)と、シルエット表示のイメージ(出所:キヤノンマーケティングジャパン)
「オフィス密集アラートソリューション」の入室人数カウント(左)と、シルエット表示のイメージ(出所:キヤノンマーケティングジャパン)
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 アジャイルメディア・ネットワークは、AIカメラで分析を行う「SkyREC(スカイレック)」を利用したコロナ対策AIソリューションのレンタル提供を開始した。分析データを自動で共有し報告する機能を備えるため、現場にいない本社管理者が状況や傾向を把握できる。また、レンタルのため、対応期間の判断が難しい場合や、イベントなど利用期間の短い場合でも低コストで導入できる。

 分析用AIカメラを用いて密集検知(混雑状況の把握)、発熱検知(サーモカメラによる発熱者の検知)、マスク検知(マスク装着の有無)を行い、自動的に情報を共有し管理者へ報告する。また、パーソナライズド動画生成ソリューション「PRISM(プリズム)」を活用することで、現場責任者や本社管理者などの報告対象に合わせて、動画内容を自動で選択し、従業員の安全に配慮しながら、さまざまな立場の管理者や現場責任者が労力を掛けずにコロナ対策を実行できると説明する。

 SkyRECは、リテール店舗分析に特化したAIカメラソリューション。店内外に設置したカメラの映像により、来店者の性別や年齢といった属性をはじめ、店舗内の滞留や導線、更にはリピート客など重要指標の分析も可能としている。世界15ヵ国で110ブランド2250店舗以上の導入実績がある。最大20人を検知可能なドーム型カメラや個別検知のハンディー型カメラを揃える。PRISMは、ユーザ情報をもとにサーバー上で自由に動画を組み合わせ合成することで機能を持ち、ユーザ特性に最適化した動画を大量かつリアルタイムで生成できる。

SkyRECの機能一覧(出所:アジャイルメディア・ネットワーク)
SkyRECの機能一覧(出所:アジャイルメディア・ネットワーク)
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 野村総合研究所は、自社オフィス向けに「3密(密接・密集・密閉)+発熱検知」のためのデジタルソリューションを導入した。密接対策では、会議室内のソーシャルディスタンスを確保するためにAIカメラを設置。会議室内の人数をカウントし、所定の人数を超過したり、過度な密接が続いたりする場合は音声メッセージで注意喚起する。また、マスク未装着者を検知した場合も同様のメッセージを発する。

 密集対策では、来訪者会議室のあるエリアでは来訪者を含む全員がBluetooth Low Energy無線通信タグ(BLEタグ)を着用。BLEタグが、別途据え付けた受信機と連動しながら、密集のレベルや経過時間を計測・記録する。万が一、新型コロナウイルス感染者が発生した場合の濃厚接触者や消毒対象エリアの特定に活用する。計測対象エリアは順次拡大する予定。

 密閉対策では、空気質センサーが会議室の空気中のCO2濃度を計測。一定の濃度以上になった場合に密閉度が高いと判断し、換気を促す音声メッセージを流す。各会議室の空気質の状態を集中管理し、管理者が各部屋の状態を把握できるようにした。

 発熱検知では、オフィスの受付エリアにサーマルカメラを設置した。入館ゲート通過者の顔をAIで捉え、体温をカメラで計測する。発熱の可能性を検知した場合は、検温などのセルフチェックを促す。なお、これらのソリューションの導入開始時期は、オフィスやエリアによって異なるという。

自社のオフィスに導入した「3密+発熱検知」のためのデジタルソリューション(出所:野村総合研究所)
自社のオフィスに導入した「3密+発熱検知」のためのデジタルソリューション(出所:野村総合研究所)
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──記事冒頭の画像:困難な状況に立ち向かうビジネスを、テクノロジーで守り抜く(イメージ) original image: metamorworks / stock.adobe.com