新型コロナウイルスの感染拡大は、今後も日本経済に大きな負の影響を残すと考えられる。その一方で、感染対策への取り組みに伴い、これまで日本企業が立ち遅れていたデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが急速に広まりつつある。今回は特に、これまでは人力で処理されていた業務における、デジタル化の取り組みについて紹介したい。

飲食・小売業:食材や商品の受発注をデジタル化

 飲食店における毎日の食材の発注は、閉店後からスタッフが帰宅する終電間際までの限られた時間で在庫を確認してFAXを送信しているのが現状で、手書きFAXによる発注ミスや、退勤後に発注確認ができないなどの課題があった。また、近年ではアルバイトのスタッフがFAX操作を知らない、パソコン操作に不慣れといった新たな課題も出ているという。

 こうした課題に対して、インフォマート(東京都港区)は、飲食店の日々の食材の発注をスマートフォン(スマホ)から行えるアプリ「Order Time(オーダータイム)」を開発した。同社の食品卸会社向け受発注電子データ化サービス「BtoBプラットフォーム 受発注 ライト」を利用する発注先の卸会社に対して、飲食店は時間や場所の制限を受けずに日々の発注を行うことが可能だ。

 手書きによる発注ミスがなくなり、FAXやパソコン操作が不慣れなスタッフでも簡単に発注作業ができる。また、飲食店だけでなく取引先の卸企業の受注もデジタル化できるため、受注ミスを削減でき、言った・言わないなどのトラブルを軽減できる。

 2021年1月ころには、インターネットFAX機能を追加する予定。BtoBプラットフォーム 受発注 ライトを利用していない卸会社などに対してもアプリからFAX発注することが可能になり、スマホ1台ですべての取引先に発注が行えるようになるという。

 小売店チェーンの店頭でもDX化の波が進んでいる。従来は店舗の営業担当者が商品の陳列状況を報告し、それを基に本部が売り上げ拡大に向けた分析や棚割の提案などを行う。しかし、全国の店舗の営業担当者から上がってくる商品の陳列報告は膨大な量になることから、これらの情報に基づいて現状を把握するだけでも大きな負担となり、適正な分析や提案を行うには限界があった。

 そこでNECは、2018年9月から商品陳列状況をデジタル化する「売場情報画像解析サービス」を提供している。画像認識技術を活用し、スマホなどで撮影した棚の画像から商品の陳列状態をデータ化し、棚割管理ソフトに取り込んで商品の陳列を再現できる。従来の棚の画像を見ながら手作業で棚割管理ソフトに入力する方法と比較すると、作業時間を約10分の1に削減できるという。

 さらに今回、菓子卸大手の山星屋(大阪市)と協業し、オプションサービスとして、山星屋が持つ商品マスタデータを提供する「商品マスタデータ提供サービス」を開始した。ユーザ側で商品のマスタデータを用意する必要がなくなるため、売場情報画像解析サービスをより手軽に利用できるようになる。合わせて、約10万点の菓子商品の最新画像を提供するため、菓子商品の頻繁な改廃やパッケージ更新にも対応可能だ。

売場情報画像解析サービスにおける商品マスタデータ提供のスキーム(出所:NEC)
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 商品を管理する物流業界では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で現場での人手不足が深刻化しつつある。顧客の非接触志向の高まりからEC利用率が増加し、物流の需要が増大したことによるものだ。さらに、物流センターでは従業員の密回避が必要となっており、「新しい生活様式」に合わせてDXを推進した新たな物流体制の導入が求められている。

 スポーツ用品チェーンのアルペンは、物流の主要拠点であるアルペン小牧ディストリビューションセンター(小牧DC、愛知県小牧市)に、村田機械(京都市)の3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT(アルファボット)」を導入する。2021年7月に稼働開始する予定だ。

3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」(出所:アルペン)
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 ALPHABOTは、村田機械が2019年に戦略的パートナーシップを締結した米国の物流ロボットメーカーであるアラート・イノベーション(Alert Innovation)から技術導入した自動倉庫システム。走行・昇降機能を持つロボット台車(BOT、ボット)が、保管ラックの外も走行してピッキングポイントに商品を自動で供給する。作業者は広大なスペースを移動する必要なく、定点で効率良くピッキングできる。

ALPHABOTのロボット台車「BOT」(出所:アルペン)
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 また、3Dロボット倉庫は、商品を立体保管ラックに収納するため、AGV(無人搬送車)型ロボットより少ない床面積で大量の在庫商品に対応できる。オーダー別ピックのほかバッチごとのトータルピックにも対応する。従来の自動倉庫とは異なり、駆動部はBOTのみのため、システム全体のトラブルが少なく、故障時も他のBOTでリカバリーすることで出荷作業を継続できるとしている。

 設置面積69×24×6mに約2万6000ケースを保管可能。BOTは130台を備える。アルペンは、同システムが関わる物流業務の保管補充、ピッキング、仕分け、梱包の工程において約6割の業務削減をめざす。また、今後さまざまな物流拠点への導入も検討する。

──記事冒頭の画像:さまざまな業務で急速に広まりつつある、デジタル化への取り組み(イメージ) original image: Monopoly919 / stock.adobe.com