遠回りしてたどり着いたIT起業家への道

 フィッシュパスは福井県坂井市で、2016年10月に設立したスタートアップだ。地元出身の西村氏は1975年生まれで、関西大学文学部を卒業後に化学メーカーの日東電工に新卒入社。その後、国内独立系のコンサルタント会社に転じて外食部門を担当した。

 そこでノウハウを学び、2004年に福井県にUターンして独立。同県内でフランチャイズチェーン店を経営し、外食ビジネスに乗り出した。そして店舗経営が落ち着いた2015年、福井県立大学大学院に進学したユニークな経歴を持つ。

フィッシュパス代表取締役社長の西村成弘氏(写真:小口正貴)
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 「大学を卒業した2000年はちょうどITバブルの頃で、私もIT起業家に憧れていました。当時愛読していたビジネス誌の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に、初期投資の少ない移動式のサンドイッチ店で資金を貯めて起業するといった“神話”が書いてあって。いきなりサンドイッチ店は無理だろうし、まずは大企業で組織を学ぼうと。次は飲食ということで飛び込んだわけですが、予想以上に時間がかかってしまいました(笑)。変わったキャリアと思われるでしょうが、大学院進学は昔からの夢へ踏み出した第一歩なのです」(西村氏)

 経済・経営学研究科に進んだ西村氏は、地域活性化の研究を専攻。並行してゼロからITを学んだ。「飲食時代はスマートフォンも持たないほど浦島太郎状態。まっさらな知識で入学したので、周りも親身になって教えてくれました。逆に東京だと選択肢が多く、40歳を超えてからの学びは厳しかったと思います」と振り返る。

 研究については当初、福井駅前の活性化をターゲットとしていたが、ビジネスのイメージがわかなかった。そんなある日のこと、西村氏はリフレッシュも兼ねて地元・坂井市を流れる竹田川に久々に釣りに出かけた。幼少の頃、祖父とともに頻繁に遊びに来ていた一級河川だが、自然破壊によって川が干上がっている様子を見て愕然としたという。

 「30年前はあんなに豊かだった竹田川が荒れ果てていました。この川をかつての姿に戻したい。その気持ちがフィッシュパスを開発する原動力となりました」(西村氏)

荒れた川の状態が西村氏を奮い立たせた(出所:フィッシュパス)
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 川の整備について調べていくうちに、先に挙げた遊漁券購入の認知不足や漁協維持の危機的な状況が見えてきた。そこで地域活性化のテーマを内水面漁業が抱える課題の解決に定め、フィッシュパスのビジネスモデルを携えて2015年に福井市主催のビジネスプランコンテストに参加。見事グランプリを獲得し、市の助成を受けた上で起業に至った。