前年比1.5倍の売り上げに貢献、新型コロナで需要も急増

 フィッシュパスは釣り人、漁協を巻き込んだ川釣り体験のDX(デジタルトランスフォーメーション)が核となる。遊漁券のアプリ化だけでも釣り人に大きな利便性をもたらすが、西村氏はそれだけでは足りないことを肌で知っていた。

 「私が実現したかったのは、釣り人が現地に行って確認してから遊漁券を購入できる仕組みづくりでした。特に渓流釣りは山深く分け入ることが多く、釣り場の状況は現場に行かないとわかりませんから。いかに快適に楽しく釣りができるかを考えたとき、スマートフォンとGPSを使って現地で完結するシステムが必須だと思ったんです。

 フィッシュパスは、現地で釣り人がデジタル遊漁券を購入すれば、GPS情報が漁協の監視員に届き、どこで誰が釣っているかを把握できます。これまで、場合によっては崖を降りて危険な思いをして監視をすることもあり、未購入者とは徴収を巡ってトラブルも多発していましたが、遠隔監視によってそうした苦労も解消されました。釣り人はもちろん、導入した漁協からも高い評価をいただいています。スマートフォンと一緒で、一度使うと元に戻れないとの声が多いですね」(西村氏)

フィッシュパスは地元の販売店名で購入可能。販売競合がなく、販売店には購入金額と同じ額の手数料が支払われる(出所:フィッシュパス)
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 実績もない初期は漁協への売り込みが難航したが、地道な地方行脚と説得を行い、そこに福井市から助成を受けている信頼感が加わり、徐々に導入数を増やしていった。2021年4月現在、全国の提携漁協団体数は106を数え、アプリ利用者は6万人に拡大。4年後には全国の過半数を超える450漁協との提携を計画している。

 また、販売方法にも工夫を凝らした。従来の販売店は遊漁券販売による販売手数料を得られるが、フィッシュパスはアプリ内で既存店舗を選択できるようにし、手数料も同額を支払う方式を採用した。つまり既存店舗にとっては24時間収入を得られるオンラインの販売チャネルが増えたことになる。地元の竹田川漁協ではフィッシュパス導入後、2018年3〜9月のワンシーズンで前年比148.8%、約1.5倍の売り上げを達成。つられて紙券の売り上げも前年比104.2%に向上する相乗効果が生まれた。2012〜2017年は毎年8〜9%の販売減少だったことを考えると、驚くほどのV字回復といえる。

 「新型コロナの影響で2020年から一気に需要が伸びました。完全な非接触型のビジネスモデルなので、漁協や販売店は県外から数多く訪れる釣り人と接触しなくて済みますし、釣り人も地理が不明な場所で販売店を探さずに済みます。2021年の初頭は電話がひっきりなしにかかってくるほどの盛況ぶりでした。現地説明会で反応がなかった漁協からも『ぜひ導入したい』とお声がけいただくケースが急増しています」(西村氏)

漁協の組合員は遠隔からタブレットで釣り人の位置を把握。効率化に大きく貢献した(出所:フィッシュパス)
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