採用は地元出身者のみ、その狙いは?

 料金体系も「現場ファースト」を貫く。仮に工事期間が半年だとしても、ツールを使った月の分だけを請求する。何らかの事情で工事がストップしてしまっても、その期間は課金しない仕組みだ。また、工期が終わっても書類整理が続くことがほとんどのため、工期終了後の2ヵ月間はinformation bridgeを無料で利用できる。「これも現場の感覚から加えたサービス。データ容量や利用人数に制限を設けていないのも同じ理由からです。送信データ量をいちいち気にしていたら、仕事になりませんからね」(百成氏)。

 こうしたユーザー本位の展開により、現在は北海道と沖縄を除く全国をカバーするまでに成長した。金沢市の本社に加え、岡山県に中・四国オフィス、東京都に東京オフィスを構える。2018年3月までは、国交省が推薦する「NETIS(新技術情報提供システム)」に情報共有システムとして唯一登録された。百成氏は「アイサスの考え方に皆さんが共感してくれた結果」と話す。

 これまで大手資本から出資を持ちかけられたこともあるが、百成氏はその手のアプローチには興味がないという。根底には、起業するときのビジョンが関係している。

 「会社が成長して儲けることが目的ではなく、アイサスの提案で建設業の困りごとを解決する、現場の役に立つことが目的なのです。私自身が建設業界出身ですから、起業の際には地元の建設業協会や同業者の皆さんに本当に助けてもらった。その人たちに恩返ししなければとの思いはずっと持ち続けています。

 だから金沢市から本社を動かそうとは思いません。それに、石川県のビジネスプランコンテストで入賞したことで、IT系企業とのつながりを含め、起業にあたってさまざまな支援をいただきました。競争相手がたくさんいる首都圏では、こんな手厚いサポートは受けられなかったでしょう。今は自治体でもスタートアップ支援が盛んです。戦略的に地方で起業することは選択肢として大いにアリだと感じています」(百成氏)

活発に意見を交換し合う社内の風景(提供:アイサス)
活発に意見を交換し合う社内の風景(提供:アイサス)
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 この考えに則り、アイサスでは地元あるいは周辺地域出身者だけを採用することにこだわっている。「我々の営業先は自治体と地元の建設業者。日本は狭いようでいて、金沢、四国、東京では文化も生活もしきたりも違い、言っていることを額面どおりに受け取ってもらえないこともある。だからこそ、地元のことをよく知っている人間が最適だと考えて採用しています」(百成氏)。加えて工業高校の土木科の生徒を対象に土木の仕事の実情を伝えるなどし、次代の若者に向けた啓発も行っている。

 「現場で汗水たらして働くだけのイメージではなく、今ではITでここまでスマートに仕事ができるということを教えています。地元に根ざした建設業者は、ある意味でインフラを支えているわけですから非常に大事な存在なんです。ITで業界自体の生産性が向上して、若者が入ってきて魅力的な構造物ができ、社会が発展する。そうして時代は変わっていくのだと思います。そこにinformation bridgeが貢献できれば嬉しいですね」(百成氏)