NTTドコモの経営企画部門でキャリアを築いた人物が、地元の新潟市に戻って起業したIT企業の「ユニークワン」。地方では手つかずだったWeb広告をはじめとするデジタルマーケティングの土壌を開拓し、急成長を遂げている。めざすはITの利を生かしたグローバルメガベンチャー。その意気込みを代表に聞いた。

ブルーオーシャンだった地方のWeb広告

 東京から上越新幹線で約2時間、最短では1時間30分台で到着する新潟県新潟市。人口約80万人を有する本州日本海側唯一の政令指定都市で、海の玄関口である新潟港は国際拠点港湾として貿易の拠点となっている。

 ユニークワンは新潟市に本社を置くITスタートアップだ。代表取締役社長を務める立川和行氏は高校まで新潟市で生まれ育ち、慶應義塾大学総合政策学部に進学。新卒でNTTドコモに入社して以降は、経営企画部門で働いてきた。輝かしいキャリアを歩んできた彼は起業をきっかけにUターンしたわけではなく、当初は家業であり、実父が代表を務める農業法人「カガヤキ農園」(新潟市)へと腰を落ち着けた。

ユニークワン代表取締役社長の立川和行氏(写真提供:ユニークワン)
ユニークワン代表取締役社長の立川和行氏(写真提供:ユニークワン)
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 農園での仕事も充実し、一時は後を継ぐことも考えたという立川氏。ではなぜ、まったく畑の違うIT企業を立ち上げたのか。そこには、これまで本連載で取材してきたスタートアップ同様、地方ならではの強烈な課題があった。

 「カガヤキ農園ではネット通販も手がけていたので、ホームページの改修をしようと新潟市内の制作会社に声をかけてみました。そしたらどの会社も驚くほどITの知識がなかったんです。これはあくまで一例で、“なぜ地方のIT化はこんなに遅れているのか”と思うことはほかにもたくさんありました。そこでこれまでの経験を生かし、『地方をITの力で活性化したい』との思いから2014年4月にユニークワンを設立しました」(立川氏)

 Webマーケティング支援と地域情報メディアの運営を2本柱とし、近年では自社製品である広告運用結果リポートの自動配信ツール「racooon(ラクーン)」やSNS分析ツール「ooowl(オウル)」を開発・提供するなど順調に成長曲線を描く。わずか1人で始めた会社は、7年目に突入した今では約30人を率いるまでになった。

 「ITの中でもWeb広告から始めようと決めていました。なぜなら2014年当時でさえ新潟にはWeb広告の代理店がほとんどなく、地元の会社がネットでプロモーションする術を知らなかったからです。いざ起業すると注文が殺到し、わずか1年半ほどで年商1億円に到達しました。つまり、ニーズはあるのにブルーオーシャンだったのです」(同氏)

 IT業界のコミュニケーションはつい横文字だらけになりがちだが、ユニークワンではわかりやすい言葉を使った円滑なやり取りを心がけている。「『デジタルマーケティング』ではピンとこなくても、ネットの広告をやっていると説明すれば年配の経営者でも理解できます」と立川氏。このように“地元にいるからこそ提案できる”スタイルで同社は急成長を遂げてきた。

約30人の社員が働くオフィスの様子(写真提供:ユニークワン)
約30人の社員が働くオフィスの様子(写真提供:ユニークワン)
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 「東京のマーケティング会社はITツール任せの運用ですが、それではうまくいきません。当社は地方の会社との付き合いに慣れていますから、人によるサポートとITツール運用のハイブリッド方式で他社との差異化を図っています。そこから徐々に発展していけばいい。“地方のIT化をリードする”とのミッションを実現するためにも、こうした地道な取り組みを重視しています」(同氏)