作ってみたら、仲間がいた

ソフビ怪獣への情熱の源泉はどこかと聞いた。「もう完全に中二病ですよね。旅館業からの現実逃避の部分もあるかも。でも、國分さんがいなかったらまったく何にもできてないんです」と西村さんは笑う。

やりたいことをやるべき時代だと言われる。けれどその前に、旅館経営というやらなくてはいけないことが西村さんにはあった。

西村さんが嫌いな言葉は「情熱・努力」だそう。真面目で大人になることを強要された気分。「平成がまさにそういう時代でした。みんな自分が正しいような顔をしてる。もちろん努力は大切ですが、でも、もっとバカらしいことをしなくちゃいけないと思うんですよね」。

年号単位で世の中をとらえる感覚は、明治創業の旅館の経営者だからか。エネルギーに溢れていた少年時代の昭和、大人になることを強要された平成。令和の時代になり、西村さんは妄想を爆発させてバカバカしいことをやれる大人になった。

ソフビ怪獣を作ってどう感じたのか。「あぁ…世界にはこんなに仲間がいるんだ、って思いました。東京にいるのはもちろんですが、福島県内でもソフビファンがいたんです。お医者さんとか、大学の先生とか。それは旅館業では出会えなかった人たちなんで」

西村さんは感慨深そうにフドウタキングの背中の不動明王を撫でる。

帰りの車の中で、最後に少し意地悪な質問をしてみた。

「旅館をやってるから『世界初の』旅館オリジナル怪獣と言えた。旅館をやってなかったらそこまで話題にならなかったし、世界が広がることもなかったんじゃないですか?」

西村さんは少し間を置いた後、「…うん、そうかもしれない。そうかもしれないですね」と自分に言い聞かせるように言った。

磐梯西村屋
温泉通からとても評価が高い温泉。源泉100%かけ流しで、強酸性の硫黄泉が評判。
住所 : 〒969-2752 福島県耶麻郡猪苗代町蚕養沼尻山甲2855-144
TEL : 0242-64-3311
https://www.bandai-nishimuraya.jp/
猪苗代町非公認怪獣シリーズは磐梯西村屋のみで販売。
筆者 滝口勇也(PANTS)
「思い込みを、脱いじゃおう。」をテーマに、これまでの常識やあたりまえをちょっと疑って新しい視点に気づけるモノづくりや企画を考えるクリエイティブチーム「PANTS」。炎上シミュレーションゲーム「大炎笑」・亡くなった人について語るためのゲーム「ないはずの記憶」・大切な人への思いを残す「一生つづくゲーム」など。
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