まさかの断髪式

滝口さんが旅館の方から新聞紙をもらい、髪を刈るための部屋まで借りてきた。

滝口「いやぁ、楽しみだなぁ!」

まさか自分が坊主になろうとは、数時間前の自分は知る由もない。

吸盤綱引き、興味がないわけではない。しかし、勢いでハゲになっていいんだろうか。迷う僕の気持ちを知りもせず、先輩はどんどんと準備を進める。

滝口「じゃあ、いくね~」

ゔぃいいいいいん、パサッ… ゔぃいいいいいん、パサッ…

滝口「できた! あれ? う、うん…林くん、頭の形、いいね…」

心なしか、半笑いな気もするが…。

でも、せっかくハゲ、いや、スキンヘッドにしたんだ、やるからには負けたくない!

参加してみた!

午後5時、いよいよ「有多毛」がスタート。

会場にはズラリと揃うおじいちゃんたち。参加者は30~40名ほどだろうか。そのほとんどが本当に見事なハゲっぷりであり、会場は異様な空間となっている。会長いわく、富山県、宮城県、山形県など、全国からハゲが集まっているとのこと。

奥にいる髪の毛のある方々は来賓の人。

驚くことにテレビ局が3社、その他にも新聞社が取材に来ていた。

「有多毛」はいろんな出し物があるらしい。こちらは誰のハゲ頭なのかを当てる「平和の光当て」。

何が「平和の光」なのかはよくわからないが、僕の戸惑いをよそに、場が盛り上がっていく。

こちらは「ハゲピタダーツ」。ハゲ頭めがけて冷却シートを投げる。

冷却シートがうまくハゲ頭につくと場内は一気に盛り上がる。でも、ちょっと待ってほしい。冷却シートがハゲ頭についたからと言ってなんなのだ。冷却シートで頭を冷やすべきは観客の方じゃないのか。

次の出し物は「勝手にハゲアワード」。その年に最も輝かしい活動や成果を残したハゲの偉人に対して、トロフィー(ハゲのこけし)を勝手に贈りつけるのだそうだ。今年はノーベル化学賞を獲った吉野彰博士が選ばれていた。「あなたはハゲの偉人だ!」と勝手に表彰されるのか…吉野さんはどう思うんだろうか。

そしていよいよ、目玉イベントの「吸盤綱引き」の時間。

繰り返しになるが、やっていることはハゲ頭に吸盤をつけ、その先に紐がついていて、綱引きをする、というもの。ただそれだけ。なのに盛り上がりがスゴい。見ているこっちもだんだん興奮してくる。そのとき、ひとつのことに気づいた。綱引きの紐の中心に小さな札がかかっているのだ。

よく見るとそこには「ツル多はげます会」の文字。

なるほど、メディアが撮ったときに何の会なのか、わかりやすいようにしてるのか。メディア映えがちゃんと考えられている。

そして、いよいよ、決勝戦。

このとき、ツル多はげます会のスゴさを見た。メンバーが「みんな、こっちに集まって!」と人々を片側に集めたのだ。この写真の手前には取材のカメラがズラッと並んでいる。なるほど、メディアが撮りたい画をちゃんとわかっているのだ。ツル多はげます会の工夫が少しずつわかってきた。

決勝戦では新チャンピオンが登場し、大いに盛り上がった。

というわけで、僕も頭に吸盤を付けて挑戦!

頭につける吸盤が想像よりもだいぶ大きく、ちょっとやそっとでは外れない。

見た目にはバカバカしいが、実はかなり痛い。

必然的に、積極的には動けず、少しずつ力を入れてじっと引っ張り合うことに。

やってみるとこれが…痛い! 頭の肉が持って行かれる! これは想像していなかった。

そして、簡単に負けました。悔しい…。

最初はなめてかかってた吸盤綱引きなのに、今は悔しさしかない。いつの間にか本気になっていた。

先輩の滝口さんもいつの間にかスキンヘッドになり、喜んで挑戦。

しかし、こちらもあっさりと負け。

最後に、吸盤綱引きグランドチャンピオンの成田さんにも挑戦しましたが、強かった……2人がかりでやっても勝てませんでした。

頭にはしっかりと吸盤の跡…。

練習も含めて何戦かしたため、いくつもの跡がついてしまった。見た目には気持ち悪いかもしれないが、自分としては戦った証としてなんだか誇らしい。いつの間にか、吸盤綱引きに魅了された自分がいた。