こんにちは。PANTSの滝口です。ふだんは「思い込みを脱いじゃおう。」を合言葉に、映像・イベント・ゲームなどの企画開発を行っています。この連載は「思考のタガの外し方」をテーマに、これはタガが外れてるなぁ、という街おこし活動をされている方にインタビューして、タガの外し方のコツを探る、というもの。今回は、東京・丸ノ内線の終点・方南町にあるお化け屋敷へ。なんで住宅街の中にお化け屋敷をつくったんだろう? しかも、もう8年もあるらしい。さっそく行ってみました。

なぜ住宅街の中にお化け屋敷を!?

さっそく来ました、方南町お化け屋敷「オバケン」の「畏怖 咽び家」(いふ むせびや)。案内してくださるのは「オバケン」のホラープランナー・吉澤ショモジさん。

このお化け屋敷は実際に人が住んでいた家を改修してできたもの。しかも、「お化け屋敷」と銘打っていますが、中にいるのは殺人鬼。今日は中でお話を伺うのですが、殺人鬼は出てこないですよね…。

滝口「さっそくですけれど、タガ、外れてますよね?」

吉澤さん「いや、ぼくはいたって普通ですよ」

滝口「だって、ふつう、住宅街の中にお化け屋敷つくろうなんて思わないじゃないですか。もう8年もやってるんですよね? 住民の方からは何か言われないんですか?」

吉澤さん「最初につくったお化け屋敷は『方南町お化け屋敷オバケン 忘れられた家』というんですが、そのときは、見事なくらい、住民の方からは引いた目で見られていたと思います。だれも寄りつかないし。近所の小学生がたまに来るくらい。『なんだよ、ここー』って言われて、ふざけて飛び膝蹴りされたり…」

滝口「だいぶ、なめられてますね…」

吉澤さん「お客さんはほとんど来ないので、裏で別の仕事をしてて、お客さんが来たら着替えて出て行く、そんな感じのお化け屋敷でした」

滝口「そもそも、なんで方南町でお化け屋敷をやろうと思ったんですか?」

吉澤さん「学生時代、『オバケン』代表の日比とよく一緒に心霊スポットや廃墟に行ったりしてて、怖いものはお互い好きだったんです。で、あるとき、ぼくらの親会社の社長が『ちょうどいい物件があったから借りたんだけど、ここで何か面白いことやってよ』って言ってきて。じゃあ、そこでお化け屋敷をつくってみよう、と」

滝口「何をやるかも決まってないのに、ちょうどいい物件って思ったんですか、社長さん。不思議ですね」

「オバケン」のお化け屋敷の特徴

このインタビューが行われているお化け屋敷「畏怖 咽び家」のスタートは一風変わっている。

参加者は、古い物件の内見をしに行く人、という設定で、まず架空の不動産屋のサイトから内見の予約(=お化け屋敷のチケットの購入)をする。体験当日、方南町駅1番出口の路上で、不動産屋さんに扮したスタッフと待ち合わせして、物件案内されるようにこの建物に連れて来られる。つまり、建物に入るところからがスタートではなく、不動産屋のサイトで内見の予約をし、駅で待ち合わせをするところがお化け屋敷のスタートなのだ。

物件を案内されているうちに、ふと、スタッフが姿をくらます。気づくと階下で殺人鬼が蠢(うごめ)いている気配。果たしてあなたは無事にこの建物から脱出できるのか?

参加者は「観客」ではなく、物語の主人公として自らが殺人鬼のいる世界を「体験」する。他ではできないこの体験をしたくて、この「畏怖 咽び家」には年間約1万2000人が訪れる。

滝口「オバケンさんのお化け屋敷ってちょっと変わってますよね。ふつうのお化け屋敷って入り口から出口まで一本道の『ウォークスルー型』が多いと思いますが、それとはちがう」

吉澤さん「ぼくらのお化け屋敷は、いろんなところを自由に行けて、いくつかのミッションをクリアしていくタイプなんです。ゴールするんじゃなくてクリアする。映画の主人公になれるような体験をめざしてます」

滝口「ぼくも以前体験したんですが、本当にホラー映画の中に入ったみたいな体験でした…殺人鬼を目の前にしたら視界がスローモーションになって。そのとき押入に隠れてた同僚たちの居場所を告げ口して、殺人鬼がそっちに向かった間に自分はダッシュで逃げ出したんで、後ですごく非難されました…」

吉澤さん「ヒドいじゃないですか!」

滝口「自分はいざというときに逃げ出す男なんだ、って落ち込みました。自分が物語の世界に入り込んでたからこその経験ですが。そういうお化け屋敷にたどり着いたのはどうしてですか?」

吉澤さん「今までの常識を外してみんなとは違うことをしたい、ってのがありますかね。ウォークスルー型も歴史があって素敵だと思ってるんです。五味弘文さん(注:お化け屋敷クリエイターの第一人者)のことも尊敬もしてるし。でも、同じ事をやってもつまらないですし、お化け屋敷の常識を根底から壊したかったんですよね。日本のお化け屋敷ってあまりにずっとシーラカンスじゃないか、って」

滝口「古典的、ってことですね」

吉澤さん「あと、社長が借りてきた物件の間取りが狭かった、というのもあります。狭い間取りを活かそうとしたらウォークスルー型じゃ物足りなくて、それだったら今までどこもやっていなかった、かくれんぼの要素を取り入れて、いろんなところに隠れたり、どこにでも自由に行けるミッションクリア型の方が面白いんじゃないかって」

滝口「なるほど、場所ありきでつくっていったら、既存のお化け屋敷の枠を壊してた、ってこともあるんですね」