(3) 現地の人の素が垣間見える

今回のツアーでは片岡町長と大野さんの普段のやりとりが垣間見えた。

現場ではスマホで撮影しているだけで、お客さんは目の前にいない。実際のバスツアーのように、大勢で押しかけて取り囲んで聞いていたら、こうはいかない。

(4) 集中力を途切れさせない体験設計

オンラインバスツアーは1時間半という短い時間の中にいくつものコンテンツを詰めてある。今回であれば、

・添乗員さきちゃんによる琴平町の説明、クイズ
・八木ちゃん&片岡町長によるまち案内
・讃岐のり染のワークショップ
・片岡町長による「金丸座」の解説
・歴史解説を聞きながら「へんこつまん」を食べる

など、いくつもの体験が詰まっていた。移動時間もなく、事前に決めた段取りで進められるのでテンポがいい。

山本さん「オンラインバスツアーだと、お客様の顔がハッキリ見えるんです。Zoomのギャラリービューで見ると、いま楽しそうにしているか、興味を失っているか、がわかる。つまらなそうだったら現地のガイドさんに『みなさん、飽きてます』とメッセージを送ったり。実際のバスツアーだと、バスのいちばん後ろの人がどんな顔をしているかわからなかったんですけど」

あらかじめ準備をした上で、参加者の反応を見ながら臨機応変に対応できるのもオンラインバスツアーならではだ。

(5) 個人旅行ではできない体験

町長の話を聞くのも改修工事中の「金丸座」の中を案内してもらうのも個人旅行ではできない。

楠木さん「例えば、個人旅行で酒蔵を見学しても、杜氏の方がわざわざ応対するのはむずかしいじゃないですか。でも、バスツアーという形で人を集めて話を聞くのだったら応対してもらえる。集団で行くバスツアーでしか提供できない価値ってあるんです」

(6) みんなの中の一人

自分の興味度合いに応じて、参加の仕方が複数あるのもオンラインバスツアーの魅力だ。

興味があることは積極的に質問できるし、ネットで検索してさらに知識を深めることもできる。逆に興味がなかったらミニバッグづくりの続きをしても、おまんじゅうを食べてても、ボーッと眺めているだけでもいい。

これは複数の参加者がいるからこそできること。もし、自分一人のためにガイドをお願いしたら、話をちゃんと聞いてちゃんとリアクションしなくては、とプレッシャーになる。他の人の存在は、参加の心理的ハードルを下げてくれる。


以上が、オンラインバスツアーを筆者が新しい体験と感じた理由だろう。これらの要素が混ざり合って、オンラインバスツアーを終えた後には、琴平町の人々や金比羅歌舞伎、讃岐のり染などに愛着を感じている自分がいた。

ちなみに、もしあなたが「旅行をオンライン化するメリットって何だと思いますか?」と聞かれたら、おそらく最初に答えるのは「世界のどこからでも簡単に旅行した気分になれること」だろう。

もちろん、それもメリットの一つではある。けれど、琴平バスのオンラインバスツアーは、実際の旅行でも体験できることをもっと手軽にする方法ではない。そうではなく、オンラインバスツアーでしか体験できない価値を提供している。

オンラインバスツアーは「バスツアー」というフォーマットを使ってはいるが、実際は新しい体験イベントと言える。コロナ禍が収束しても、これはこれで体験したいものだと思う。

ちなみに、今年(2021年)の7月には骨付鳥を食べながらの香川県丸亀市ツアーが、

8月には、たまごかけご飯のための玉子20個と専用醤油や知覧茶が届く鹿児島・南九州市のツアーが予定されている。

琴平バスは各地の魅力を掘り起こしていく。あぁ、また参加したくなってきた。

それにしても、琴平バスが世界で初めてオンラインバスツアーをつくれたのはなぜなのか。もともとバスツアーをつくっていたから? 実は理由はそれだけではなかった。

次回、「オワコンと言われたバスツアーはオンライン化でどう進化するのか?・琴平バスの秘密編」へ続く!

コトバスツアー
https://www.kotobus-tour.jp/
琴平バスがつくったさまざまなバスツアーがある。オンラインだけでなく、実際のバスツアーも行われている。
旅行企画実施:琴平バス株式会社 コトバスセールス&ツアーズ
住所:〒760-0065 香川県高松市朝日町5-4-18ボイスビル1F
TEL:087-823-5678
営業時間:平日/10:00~12:00 13:00~18:00
定休日:土日祝
筆者 滝口勇也(PANTS)
「思い込みを、脱いじゃおう。」をテーマに、これまでの常識やあたりまえをちょっと疑って新しい視点に気づけるモノづくりや企画を考えるクリエイティブチーム「PANTS」。炎上シミュレーションゲーム「大炎笑」・亡くなった人について語るためのゲーム「ないはずの記憶」・大切な人への思いを残す「一生つづくゲーム」など。
PANTSのウエブサイト https://pant-s.jp/
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