どうしてこんな田舎に水族館をつくったのか?

若月さん「そもそも、私含めてここのスタッフは全員『NPO法人日本ウミガメ協議会』のメンバーなんです。全国のウミガメが産卵に来る場所などに出没して調査をしてます。この室戸は定置網が盛んでカメが獲れてるらしいということがわかり、2003年からまずは私が1人で常駐して調べていました」

滝口「カメが獲れる?」

若月さん「漁師にすれば、カメは食べ物なんです。今はあんまり食べませんが。我々からすれば、調査で元気なウミガメの臓器を見られる機会は少ない。死んでうち上がったウミガメは変なものを食べて喉を詰まらせてたり、腸閉塞を起こしたりで。でも、漁師が食べてくれるならこっちも心は全然いたまずに、生きたカメを解剖しなければ得られないようなサンプルが得られるんで」

滝口「ウミガメってどんな味なんですか?」

若月さん「けっこう臭いんですよね。捌くのも大変だし。今はあまり食べないですよね。そのあとも日本ウミガメ協議会のメンバーがどんどん来て。そのときに、骨が大好きなやつは骨格標本をつくるし、ホルマリン漬けが好きなやつはなんでもかんでも漬けて、っていろんなサンプルが溜まっていった。どんどん職員が増えていったんですが、我々、貧乏NPOなんで野生のウミガメに出合えるからといっていつまでもここを維持するのはしんどいね、という話になったんです。撤退はしたくないから何か方法はないかと模索していたら、室戸市のホームページに廃校の利活用の募集を見つけたんです。それが2013年くらい」

滝口「でも、廃校が出るくらいだからそもそもここは過疎化が始まってますよね。そんなところに水族館をつくっても人は来ないって思いませんでしたか?」

若月さん「考えたのは二つです。一つは身の丈にあった運営をしよう、もう一つは目の前に国道55号があったんで、ここを通る行楽客の何割かが寄ってもらえる施設にしよう、と。この近くは高速道路が通ってないんで、このあたりに用事があれば、必ずこの国道を通らなければいけないんですよ。だから人を集める、という発想ではなく、この国道を通る人を吸い寄せる、そんな思いでした」

滝口「なるほど。でもその二つだけで、うまくいくという確信は持てないですよね?」

若月さん「いや、自信はありましたね。僕らが自分たちでつくりながら、こんなところ他にないよなって楽しんでたんで。これだったら隣にあるジオパークセンターという施設の倍は来場者行くな、と。もちろん、お客さんが来なかった場合のことも考えてました。水族館がダメだったら、学校設備を使って室戸にはない超進学塾をやるとか」