出発点は、自分の中のモヤモヤ

滝口「今回のインタビューの趣旨をあらためて確認すると、どうやって思考のタガを外せたのか、そのコツを探る、というものなんです。猫の本専門の本屋さんを開こう、ってどうやって踏ん切れたんでしょうか?」

安村さん「そもそも、50歳が近くなって、会社を辞めたいな、って思ったんです。人生このままでいいのか、ってモヤモヤしてて」

滝口「サラリーマンだとよくあることですよね。本気で考えるかどうかは別にして。ぼくもときどき思います」

安村さん「転職しようにも50歳じゃ転職先も見つからない。じゃぁ、自営業をやるしかないか。だったら、好きな本と猫に囲まれた本屋さんなんかいいかもな、そんなことを考え始めました」

滝口「考え始めて、いきなり行動に移せたんですか」

安村さん「頭の中でシミュレーションはしてたんですけどね、実際に行動はしてませんでした。そんなときにたまたま「これからの本屋講座」というセミナーに出合ったんです。書店業界で有名な内沼晋太郎さんという方がやられてたんですが。その方に猫の本屋さんの企画書を見せたら、いける気がする、って言われて。そこからです、火がついたのは」

第一歩は人に公言することから

滝口「心に火がついて、何をされたんですか?」

安村さん「色んな人に公言しました。猫の本屋さんをやりたい、って。公言したら引っ込みがつかなくなるんで。そうやって、自分のやる気スイッチを押し続けたんです」

滝口「たしかに、人に話すと単なる思いつきが急にリアリティを増してきますよね」

安村さん「公言すると、相手がよく質問してきたのが、『いつ、オープンするの?』ってこと。そこまで決まってないってわかってたはずなんです。でも、聞いてきた。ぼくも『来年の8月8日です。世界猫の日なんで』って答えちゃって。引っ込みがつかなくなりました」

滝口「みんなが、いい意味で追い詰めてくれたんですね」

安村さん「しかも、面白いアイディアだと思ったら、他の人に言ってくれる。それが自然とオープン前の宣伝効果にもなった。クラウドファンディングを実施したこともそうですが、オープン前にいろんな人に公言することで、自分の考えが整理されるし、人が宣伝してくれる。しかも『面白いアイディアだね』って言ってくれて、自尊心も満たされる(笑)。そんな効果がありました」

滝口「ちなみに、本の関係のお仕事をされてたことはあるんですか?」

安村さん「いや、まったくないんです。本屋さんも出版社もまったく。むしろ、知らなかったからこそ、やれたのかもしれません。とってもエネルギーを使いましたけどね。今は書店業界に少しだけ詳しくなっちゃって、新しいことをやる前に(これは厳しいかもな)って判断して躊躇(ちゅうちょ)してしまう自分がいます」