酒は人を結び、まちを元気にする。酒場案内人の塩見なゆさんが、酒をテーマににぎわう各地のまちを訪ねます。今回は静岡・清水。ソウルフードは、長い歴史の中で食べられてきた郷土料理から、地域おこしのために新たにつくられたものまでさまざまです。時には一軒の酒場が生み出したおつまみが、まちを代表する名物の一つになることもあります。

 日本有数のマグロの水揚げ量を誇る港町、静岡市清水区。東海道五十三次の18番目の宿場町「江尻宿」として栄えたこのまちは、旧宿場町由来の歓楽街に漁業・港湾関係者が集まり、とても盛り上がっていたと言われる地域です。まちなかを流れる巴川沿いで長年寿司店を営む大将は、「静岡市中心部の人がお酒を飲みに清水によく来ていたものだ」と話すほどです。

 そんな港町の清水ですが、このまちのソウルフードは意外にも、魚介類だけにあらず。今では全国区の人気となった「もつカレー」があるのです。

金の字本店のもつカレー。手間ひまかけて仕込むビターなカレー味の煮込み串(写真:塩見なゆ)
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 もつカレーは今から60年以上前に、焼き鳥店「金の字本店」の創業者となる故・杉本金重さんが、名古屋のどて焼きにヒントを得て、戦時中に食べたカレーを使って考案したものです。1950年(昭和25年)、屋台から始まった「金の字」は、もつカレーの人気もあって、金重さん一代で清水駅前に店を構えるまで繁盛しました。

 金の字のもつカレーは一年を通じ、幅広い層に人気となります。次第に近隣の一般家庭や飲食店でも、それぞれが独自に調理して食べられるようになっていきました。

 現在、金の字本店を切り盛りするのは、金重さんの孫にあたる三代目の杉本要平さん。清水のまちに広がったもつカレーについて、杉本さんに伺いました。

金の字本店の杉本要平さん。仕込みの手を休めることなく、インタビューに答えてくれました(写真:塩見なゆ)
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