酒は人を結び、まちを元気にする。酒場案内人の塩見なゆさんが、酒をテーマににぎわう各地のまちを訪ねます。今回は東京・目黒の武蔵小山。再開発が進む駅前で飲食店の移転や閉業が相次ぎ、お酒を飲むまちのイメージがなくなってしまうことを危惧した割り材メーカーの女性社長がイベントを企画して地元を応援しています。

 首都圏では「わるならハイサワー」のキャッチフレーズでおなじみの割り材メーカー「博水社」。1928年に東京都品川区で創業し、1954年、東急目蒲線武蔵小山駅に近い目黒区目黒本町に工場を移転。以来、目黒・武蔵小山の博水社として地元の人々に親しまれてきた地元密着型の企業です。

 今回は、同社の3代目社長・田中秀子さんから、割り材メーカーならではの地域活性化について伺いました。

博水社の3代目社長・田中秀子さん(写真:塩見なゆ)

 まずは割り材メーカーというカテゴリーについて。関東以外の全国区ではなじみがありませんので、先に説明しましょう。

 焼酎やウォッカなどをベースにした「チューハイ」は、特に飲食店において関東と関西で異なります。

 関東では、主に宝酒造や宮崎本店(キンミヤ焼酎)、三楽(メルシャン)などが製造する甲類焼酎を、炭酸水やあらかじめ味のついた炭酸レモン水、またはビールテイスト飲料(ハイサワーハイッピーやホッピーなど)で割ってつくることが多いです。

 一方、関西ではメーカーであらかじめアルコールに炭酸水や甘味料などを入れて味を整え、樽(たる)に入れ、これを生ビールと同じようにサーバーにつないでそのまま注ぐ樽詰め(アサヒ樽ハイ倶楽部、サッポロ氷彩サワーなど)が一般的です。

 このように関東では割り材を店側で用意することになるため、割り方に自由度があります。飲食店は地元にある中小の清涼飲料水メーカーから炭酸水などの割り材を調達しています。

 博水社をはじめとして東京に約250社あったまちの中小飲料水メーカーは、昭和30年代に海外資本の大手清涼飲料水メーカーが日本に上陸したことや、大手ビールメーカー系のソフトドリンク部門の拡大によって廃業や事業転換が進み、現時点では40社ほどまで減少しています。

 博水社はそんな背景の中で、清涼飲料水から撤退して事業を割り材に集約しました。その後、1980年完成のレモン風味の炭酸水「ハイサワー」のヒットもあり、現在に至ります。

武蔵小山や西小山の飲食店にあるハイサワー。西小山のらーめん村にて(写真:塩見なゆ)