ハイサワー特区で人を呼び込む

 博水社は2016年、地元の武蔵小山と西小山で「ムサコ・ニシコ ハイサワー特区」というイベント企画を立ち上げ、地元飲食店を活性化する取り組みを始めました。

 「武蔵小山の駅前は、この数年で大きく変わりました。駅前にあった100軒近くの飲食店が密集する路地裏の飲み屋街が再開発されることとなり、飲食店の移転や閉業が相次ぎ、お酒を飲む街のイメージがなくなってしまうことを危惧していました。地元のお酒関係の会社として、がんばる店を応援できないかと考え、ハイサワー特区の企画が生まれました」と田中さん。

再開発が進む東急電鉄・武蔵小山の駅前(写真:塩見なゆ)

 今年(2020年)で4年目になるハイサワー特区。加盟店は現在約40軒あります。不定期ながら年に3回程度、対象店舗でハイサワーやビールテイストのハイサワーハイッピーを飲むと博水社グッズなどがもらえるイベントを行っています。

「ハイサワー特区は専用のPOPも用意。地元の飲食店街を盛り上げます」と田中さん(写真:塩見なゆ)

 「ハイサワー特区のイベントで実施したビンゴラリーでは、対象28店舗をめぐってビンゴを完成させると景品がもらえる企画も行いました。酒場ばかりでなく、中華料理店なども対象に含まれています。ビンゴのミッションをクリアするために普段は行くことがあまりない飲食店も知ってもらうのが目的です。新しく入った店が気に入り、常連さんになってくれた方もいらっしゃいます」と田中さん。遠方から来る参加者も多く、イベントをきっかけに飲食店を開拓し、後日飲み友達を連れてきてくれることもよくあるそうです。

2018年3月に開催したハイサワー特区ビンゴラリーの様子(写真:塩見なゆ)

 以前から武蔵小山に暮らす人と、再開発によってこの街に新たにやってきた人をつなぐきっかけになるのではないかと、若い人が中心となって開かれる武蔵小山や西小山のイベントにも協力しています。

 田中さんは「飲み物を囲みながらだと距離も近づくし、話しやすいですよね」と言います。確かにその通りだと思います。

 最近では、川崎・武蔵小杉や東京・亀戸のお祭りやイベントでも、同じようにハイサワーや、ハイサワーを使ったご当地ハイボールなどでコミュニケーションの場を盛り上げているそうです。

 「清涼飲料水を売っていた頃は、博水社のトラックで地元の駄菓子屋などを回って配達をしていました。博水コーラなんていうのもありました。まちの人が顔見知りだから、いまでも『秀子ちゃん元気──?』なんて呼びかけられます」と田中さん。地元密着の商売だからこそ、まちの人との交流は長く深いものになっています。

 キャンペーンガールの「ハイサワーガール」と一緒に武蔵小山の飲食店を1日に何軒も回るなど、これまでもいろんな取り組みをしてきたそうです。「その心は地元への恩返し」と田中さんは話します。

 博水社は今でこそ全国のスーパーなどの店頭にも並び、アルコール入りのハイサワー缶も発売するようになりましたが、昔も今も変わることなく武蔵小山と共に歩んでいます。

博水社の缶チューハイ「ハイサワー缶」にも「東京目黒」の文字が入る(写真:塩見なゆ)
著者 塩見なゆ
酒場案内人。1984年、東京都杉並区荻窪生まれ。新宿ゴールデン街に通った作家の両親を持つ。幼いころより中央線沿線の飲み屋へ連れて行かれ、物書きの大人と瓶ビールに囲まれて成長する。会社員として広報・宣伝畑を経て独立。趣味だった飲み屋巡りを本業とし、飲食専門のライターとなる。酒場に恋して年間2,000軒を巡る。