酒は人を結び、まちを元気にする。酒場案内人の塩見なゆさんが、酒をテーマににぎわう各地のまちを訪ねます。今回は宇都宮。餃子が有名ですが、バー好きの間ではカクテルで知られています。なぜカクテルのまちと呼ばれるようになったのか。その謎を解き明かします。

 観光振興の柱の一つとして、世界中でナイトタイムエコノミー(夜の経済活動)の取り組みが進んでいます。宇都宮市は長年にわたり、官民一体となって「カクテルのまち宇都宮」をアピールしてきました。どうしてカクテルなのか。宇都宮カクテル倶楽部代表幹事の武内博さんに話を伺いました。

まちの中心にある宇都宮二荒山神社。神社を囲むように繁華街が広がる(写真:塩見なゆ)
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 東京から新幹線で約50分。宇都宮はすっかり“餃子のまち”のイメージが定着していますが、バー好きの間では “カクテルのまち”として知られています。東京から日帰り圏内ということもあり、バー巡りを楽しむ人々、通称「バーホッパー」が小旅行でやって来ます。筆者もその一人で、昼に餃子、夜にバーというのが味覚探訪の定番コースです。

 宇都宮市はバーの軒数がとても多いまちです。これだけバーが密集している地方都市は珍しく、市内のバーで結成された宇都宮カクテル倶楽部の加盟店だけでも32店もあります。カクテル倶楽部に入っていない店も多数あるので、その店数と密集度は相当なもの。

 また、宇都宮市は日本バーテンダー協会が主催する「カクテルコンペティション」で優勝したバーテンダーの数も全国最多となっています。

 その原点と言えるのが、1974年に宇都宮市泉町に誕生した「パイプのけむり」です。初代オーナーの大塚徹さんは世界を目指して腕を磨き、世界大会で賞をとりました。パイプのけむりをはじめとしたバーで働くスタッフも切磋琢磨を続けています。

 宇都宮がバーのまちとして名を広めたきっかけについて、武内さんは「全国バーテンダー技能大会で、1987年から4年連続で宇都宮のバーから日本一を輩出したことが大きいと思います。パイプのけむりの出身者の独立などによって、その後も多くのバーテンダーが店を開き、バーの軒数が多くなりました」と話します。

 今も宇都宮のカクテルに魅せられて、この業界の門をたたく人は少なくないそうです。武内さん自身もサラリーマンからバーテンダーに転身した一人です。

宇都宮カクテル倶楽部代表理事で、バー「HIRO:Z」のマスターの武内 博さん(写真:塩見なゆ)
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 このようにして宇都宮のカクテルは非常に高いレベルにあることが、日本バーテンダー協会など業界関係者の間で広まりました。ただ、一般的にはまだ知名度がありません。そこで結成されたのが宇都宮カクテル倶楽部です。設立は1999年のこと。現在加盟する店はオーセンティックバーを中心にJAZZバーなどもあります。共同でカクテルのPRやイベントを開催し、カクテルのまち宇都宮をアピールしてきました。

 カクテル倶楽部の結成を機に、それまでは個々のバーが窓口となり個別に対応してきた懇親会会場でのカクテルの提供や取材対応などが、加盟店同士で協力し合えるようになりました。