酒は人を結び、まちを元気にする。酒場案内人の塩見なゆさんが、酒をテーマににぎわう各地のまちを訪ねます。今回は宮崎市。新型コロナウイルスの影響で、宮崎県最大の繁華街「ニシタチ」では160軒もの店舗が一気に店をたたむ事態となりました。それでも提灯(ちょうちん)がともす明かりを支えに、まちと市が二人三脚で対策を進めています。

 宮崎県最大の繁華街「ニシタチ」がいま、動いています。

 まちの飲食店組合が飲み屋街を盛り上げるという取り組みは全国各地で見られますが、宮崎では行政である宮崎市役所が積極的な姿勢で繁華街の活性化に力を注いでいます。行政が繁華街にどのように関わっているのか、そして当事者である繁華街で働く人々がどう感じているのかを取材しました。

 宮崎の中心地にあるニシタチは、名前の由来でもある西橘通り(にしたちばなどおり)とその周辺からなるエリア。1000軒以上の飲食店が建ち並んでいます。また、宮崎県は人口10万人あたりのスナックの軒数が日本一(2010年のNTTタウンページ集計)で、スナックが多く集まるまちとして、地元の人々に親しまれています。

焼酎のネオンがともる夜のニシタチ(写真:塩見なゆ)
焼酎のネオンがともる夜のニシタチ(写真:塩見なゆ)
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宮崎市の三大観光資源の一つ

 スナックで観光PRを行うなど、従来からニシタチの情報発信を盛んに行ってきた宮崎市。まずは市役所で最近の取り組みについて、宮崎市観光商工部観光戦略課観光プロモーション係の井俣雅貴さん、同企画財政部企画政策課の崎原秀利さんに伺いました。

塩見「宮崎市はニシタチのPRにかなり積極的に取り組まれていますね」

井俣さん「宮崎市では、2015年に策定した第三次宮崎市観光振興計画において、青島、一ツ葉、そしてニシタチが、宮崎市の三大ブランドとして制定されました。計画に基づき、観光資源でもあるニシタチのアピールに力を入れています。スナックでまちおこしをするなど、まちの特色をいかしたイベントも開催してきました。今年(2020年)3月に策定した第四次宮崎市観光振興計画でも同様に、ニシタチを軸に食のアピールに一層力を注いでいくところでした」

塩見「そんな最中に、コロナが全国に影響を与え始めてきたわけですね。集客や観光PRが難しいなか、外出自粛による来訪者の減少や休業要請で、繁華街は大きくダメージを受けたと思います。市ではどのようなかたちでニシタチを応援されたのでしょうか」

崎原さん「ニシタチもコロナの影響は大きく、市としてなにか応援できないかと検討しました。ニシタチでは『ニシタチまちづくり協同組合(ニシタチ組合)』が中心となって2008年から毎年、多数の提灯をともし、ニシタチのイメージとして定着させています。ニシタチ組合と協議するなかで、提灯によるまちおこしに協力してほしいとの意見をもらいました。市としても提灯に関わる費用を支援することはできないかと考え、そうして宮崎市初となるガバメントクラウドファンディングを実施することとなりました」

塩見「市で最初のガバメントクラウドファンディングが繁華街の応援に使われるというのは、酒場好きにとってはなんとも心強いことです。どのようなアピールをされ、どのくらいの寄付が集まったのでしょうか」

崎原さん「市のSNS(交流サイト)や大阪、東京の事務所での告知、地元マスコミでも紹介してもらいました。県人会の方や、宮崎で勤務経験がある会社員の皆さんにも協力いただきました。宮崎はゴルフをはじめとするスポーツで県外から訪れる人も多く、ニシタチという単語にピンとくる人には現状を伝え支援を求めるメッセージが届いたのではないでしょうか。2020年6月1日〜同7月5日までの35日間の募集期間で162人から355万2000円の寄付金が集まりました(募集サイト上)」

塩見「提灯がニシタチのまちを照らす日が楽しみですね」

井俣さん「年間を通じてさまざまな方が訪れる宮崎ですが、ゴルフイベントも開催される11月にはニシタチに最も多くの人がやってきます。毎年11月にニシタチでは『ニシタチ提灯まつり』を開催しています。今回の支援が11月の提灯まつりに使われる予定です」

たくさんの提灯の明かりがニシタチをともす。撮影は2018年12月末(写真:宮崎市)
たくさんの提灯の明かりがニシタチをともす。撮影は2018年12月末(写真:宮崎市)
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 ちょっと話は変わりますが、宮崎県の郷土料理といえば「鶏南蛮」が有名です。地元の方も普段から食べているのでしょうか。取材に対応していただいた市役所の皆さんに聞くと、日常的に食べていると教えてくれました。

 また、スナックも普段から気軽に利用するそうです。シメには釜揚げうどんや最近は辛麺というピリ辛のこんにゃく麺も流行っているとのこと。