酒は人を結び、まちを元気にする。酒場案内人の塩見なゆさんが、酒をテーマににぎわう各地のまちを訪ねます。今回は青森県八戸市。かつては全国各地にあった横丁を核に、中心市街地の活性化に挑んでいます。昭和ムードたっぷりでどこか懐かしい景色が、観光客だけでなく地元の人も引き付けています。

 横丁飲みをしたことはありますか。

 自動車の通行が難しい細い路地に、小さなお店がハーモニカのように連なり赤ちょうちんが灯る横丁。かつては全国各地にありましたが、再開発などで数は減少しています。

 そんな状況にありながら、実は昨今、横丁に魅力を感じて集まる人が増えています。昭和ムードたっぷりでどこか懐かしい景色を求める若い人の姿もみられます。東京の新宿ゴールデン街や仙台の文化横丁が全国的に知られていますが、北東北にも横丁を町の観光資源としてアピールし、活性化につなげているまちがあります。

青森県八戸市にある横丁の一つ「たぬき小路」(写真:塩見なゆ)

 青森県八戸市。太平洋に面した漁師町で、かつて漁業関係者で大いに潤った繁華街があります。

 また、沿岸部は工業地帯となっており、全国から出張で八戸を訪れる人も多く、古くからの酒場が移り行く時代の中で生き残っています。

 今回は、そんな酒場が息づく横丁がまちを元気づけるようになった経緯を、八戸横丁連合協議会事務局長の月館裕二さんに伺いながら、一緒にまちを飲み歩き、八戸の横丁の魅力を探りました。

新幹線の開通で横丁に変化が……

八戸駅。東北新幹線やJR八戸線、青い森鉄道が発着するまちの玄関となる(写真:塩見なゆ)

 八戸の横丁が注目を浴びるようになったきっかけは、2002年12月の東北新幹線の八戸延伸です。新幹線の開業に併せて同年11月19日、八戸中心街の目抜き通りの三日町と六日町で「みろく横丁」が新たにオープン。小さなお店が連なり、地元八戸の食材や地酒でもてなしてくれる場所として、多くの観光客が訪れるようになりました。

 みろく横丁のオープン以前から、八戸には細い路地が入り組んだ飲み屋横丁がいくつもありましたが、このとき、従来の横丁にも変化が表れます。

 「昔から残っていた横丁で飲んでいたお客さんが、みろく横丁の誕生によって減ってしまうという事態が起こりました。新しくできた横丁だけでなく、まち全体で横丁を活気付けていかなくてはならないという危機感を持つようになったのです」と月舘さん。

 新幹線の開業によって、純粋に八戸を訪れる観光客が増えるという効果はありましたが、こうして中心街の人々が団結して取り組むようになりました。「新幹線効果による観光客だけでなく、地元の人もないがしろにせず、誰もが行きたくなる飲み屋街が目標」と月舘さんは話します。

 八戸の横丁は、入り組んだ細い路地裏に小さな飲食店が数珠つなぎになっています。さらに、飲食ビル同士も多くが境界塀などを設けず、別の建物や横丁へとつながっています。横丁や路地、これらと接続する飲食ビルに構える店舗を合わせると、およそ600軒にもなるといいます。