小金井市でもつながりの取り組み

 国分寺市の後に向かったのは、東に隣接する小金井市。林美貴さんの話を聞くためだった。林さんは、同市内産の小金井野菜を使ったスープやおからドーナツが売りのカフェ&イベントスペース「でみcafe」を拠点に、音楽や芸能、地域食材などをテーマに開催される交流イベント「mikibar」を主宰している。

 林さんは開口一番、「小金井では地域を隅々まで知り尽くしている新聞販売店さんが、休校措置により子どもたちへ食事の用意に困っている家庭と、市内にあるテイクアウトとデリバリーが可能な店をつないでいます」と、教えてくれた。

 その新聞販売店は昭和29年創業の「読売センター小金井」。市内にあるテイクアウトとデリバリー可能な飲食店の一覧を作成し、以下の4つの方法で市内の消費者に向けて発信している。

読売センター小金井が制作したステッカー(画像提供:読売センター小金井)
読売センター小金井が制作したステッカー(画像提供:読売センター小金井)
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1)折込チラシで応援:同店が普段の業務で作成するチラシの裏側などに、テイクアウトとデリバリーに対応する飲食店の一覧を印刷して、新聞チラシとして折り込む。

2)WEBで応援:Facebook上に「小金井の飲食店をみんなで守ろう!プロジェクト」を立ち上げ、ハッシュタグ #小金井テイクアウト #小金井デリバリー をつけて情報をアップする。

3)情報提供で応援:つながりのある行政、商業団体、子育て団体などに情報を提供し、広めてもらうように促す。

4)POPで応援:対応可能店共通のアイコンになるような判別しやすいPOPを作り配布する。

 「さすがは地元で70年近く営業されているだけあって、つながりが素晴らしい。読売センター小金井さんのFacebookページをフォローすると、いろんな情報が入ってきます。あと、60年ほど前から続く個人営業のお店が集まる丸田ストアー(精肉店、焼菓子、生花店、珈琲焙煎所、青果店、アトリエ)は市内限定の宅配サービスの提供を開始。近隣の方が利用し始めたそうです」

丸田ストアーの宅配サービスお知らせチラシ(画像提供:丸田ストアー)
丸田ストアーの宅配サービスお知らせチラシ(画像提供:丸田ストアー)
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 「和風ジェラートおかじTokyo」というお店は、小金井市内のデリバリーテイクアウトまたはデリバリーに対応しているお店を「コガネイーツMAP」と題してマップ化。スマートフォンから簡単にアクセスできるため重宝されている。

大切なのは日頃からのつながり

 新型コロナウイルス問題の影響を受け、経営難に苦しむ飲食店が増え、子どもの給食がなくなり悩む家庭が出てくるなど、さまざまな問題が発生している。そんななか、小金井市の街レベルの取り組みは、スピーディーで的を射たものが際立つ。その理由を林さんは、こう説明する。

 「小金井市観光まちおこし協会によるイベントなど、以前から街の住民のヨコのつながりが生まれるイベントが多く、豊かなコミュニティが育っていたのが大きい。今回のような問題が発生した時に自分が助かるだけではなく、同じ街に暮らす自分以外の人たちのことも気になり、具体的なアクションを起こし、他者のサポートを実行する人があちこちにいる」

以前に「でみcafe」で開催された「mikibar」イベントの様子(写真提供:mikibar)
以前に「でみcafe」で開催された「mikibar」イベントの様子(写真提供:mikibar)
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 「それに加えて、問題をネガティブにばかり考え過ぎず、楽しい、または美味しいというポジティブなことを忘れない人が多いように思う。その例として、小金井市観光まちおこし協会のYouTubeチャンネルでは、以前に収録したライブの動画をオンラインで楽しめる『突然ライブ』としてアップ。また、小金井市は近郊型の農業が盛んな土地で、『JA東京むさしの直売所』には地元の農業リーダーである高橋金一さんたちが採れたての新鮮な野菜をがんばって運び続けてくれている。だから、私たちは美味しいサラダを食べることができる。楽しさがないとつらいことは乗り越えられない」

地元産の野菜を販売するJA東京むさしの「小金井ムーちゃん広場」(写真撮影:筆者)
地元産の野菜を販売するJA東京むさしの「小金井ムーちゃん広場」(写真撮影:筆者)
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 小金井市の取り組みを見ていると、普段からイベントや店などを通して人と人がふれあい、つながりを熟成させておくことの重要さを思い知らされる。

 「こういう事態になって痛感するのは、やはり日頃からのつながりの大切さ。小金井に住んでいて良かった」と林さん。

 新型コロナウイルスの問題を通じて私たちは、改めて人のつながり、コミュニティの大切さを再認識する時期に来ているのかもしれない。

筆者 須田泰成(すだ・やすなり)
1968年、大阪生まれ。コメディライター&プロデューサー。テレビ、ラジオ、WEBの番組やコンテンツの脚本、構成、プロデュース多数。「スローコメディ広告社」代表。20歳の時に世田谷区経堂へ。2000年に、経堂の個人店と文化を活性化するプロジェクト「経堂系ドットコム」を立ち上げる。WEB「みんなの缶詰新聞」編集長。「経堂経済新聞」編集長。著者に『モンティパイソン大全』など。