コラボ相手のお店も驚きと笑いに包まれて

 コラボの種類は幅広い。隣接する中山商店とは「ハムカツサンド」「とり天サンド」、農大通りタイ料理のソンタナとは「えび春巻きパクチーサンド」、創作料理バルのマホラ食堂とは「いわしのコンフィと生姜のポテサラサンド」、オリジナル創作料理の太田尻家とは「タラのフライサンド」「えびコロッケパン」など。サンドイッチは全て650円。総菜パンは総菜の仕入れ値により異なるが、250円〜500円の価格帯。

こちらは中山商店と組んだ「ハムカツサンド」(写真:筆者)
こちらは中山商店と組んだ「ハムカツサンド」(写真:筆者)
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 「経堂界隈はテイクアウトメニューがいろいろあるので、楽しみながら販売しています」

  そんなコラボサンドや総菜パンがSNSを通じて広まり、思わぬ波及効果が生まれている。

 店名のonkaはアイヌ語で「発酵」を意味する言葉と聞いた。確かにこのコラボプロジェクト、発酵が食品をゆっくりとおいしくするようなスロースピードでまちを生き生きさせている。

onkaのパン工房内の様子(写真:筆者)
onkaのパン工房内の様子(写真:筆者)
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 筆者が知る経堂在住のonkaファンはこう語る。

 「onkaさんは経堂だけでなく小田急線沿線に住む女性にも人気の店。新型コロナウイルス感染拡大の前は途中下車して買いにくる人も多かった。そんな店がご近所の店のテイクアウトメニューを仕入れてサンドイッチや総菜パンを作るとコラボした店の売り上げのプラスにもなりますが、それ以上に、SNSを通じておいしそうな写真が大勢の人に見られることで、コラボした店のことがじわじわ広がります。実際、サンドイッチを食べたのがきっかけで、コラボ店のテイクアウトを買いに行った人がいる」

 筆者がツイッターを見て心が動いたのは、太田尻家のえびコロッケを挟んだユーモラスな佇まいのパン。食べたいという気持ちプラス、「このパンに会ってみたい」と思ってしまった。

太田尻家とコラボしたえびコロッケのパン(写真提供:onka)
太田尻家とコラボしたえびコロッケのパン(写真提供:onka)
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 後日、そのえびコロッケを作った店主、田尻輝幸さんに聞くと「あれはかなり大きなえびコロッケだったから、半分に切るのかなと思っていたら、そのままはさんじゃって笑った!」という答えが返ってきて、それを聞いた筆者もつられて笑ってしまったのだった。

 創作料理バルのマホラ食堂の鵜沼由佳さんはこう話して笑った。

 「うちのテイクアウトをサンドイッチの材料として仕入れてくれるのも有り難いですが、そういう広がりが生まれて、うちの店のことを知ってもらえるのはうれしい。こういうつながりを本当に大切にしたいですね」

 「はさんでみたら何でもはさめちゃうもんですねー!(笑)」と、自分が焼いたパンに本当になんでもはさんでしまう下山さんの方法は、じわじわゆっくり小さなところからまちを盛り上げ、あちこちの人を笑顔にする。

 緊急事態宣言は解除され、世の中の経済活動は少しずつ戻りつつあるが、新型コロナウイルスのワクチンが開発・普及しているわけではなく、感染を恐れる人の気持ちは変わらず、本当の意味での収束はまだ遠いと思われる。

 スマートフォンの画面には、毎日のようにコロナ不況、コロナによる倒産や閉店などのニュースが現れる。同時に経営危機に陥った施設や店を救うクラウドファンディングなどの情報も少なくない。

 誰もが「これからどう生きていけば良いのか?」について多かれ少なかれ悩むなか、onkaの自然体な方法は示唆に富んでいると筆者は思う。

 「経堂界隈はおいしいものが多いのでネタが尽きない。楽しいコラボなので、新型コロナの早い収束を祈りながら、これからも続けていきたい」

 具材を売った店も、サンドイッチにして売るonkaも利益を得て、お客さんは「おいしかった!」という三方良し。そして、宣伝効果もあり、結果として助け合いになっている。

 こんな「新しい生活様式」が全国、いや世界に広がると素敵ではないか。

(写真:筆者)
(写真:筆者)
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