コロナ対策で終わらない、新しいビジネスとしての「走る!居酒屋」

 この「走る!居酒屋」は、昼間は市内の観光地に停車して通りがかりの人々に食事やドリンクを提供する。夜には「出張居酒屋」として各所に直接フードトラックで出向き、コース料理とお酒やドリンクを振る舞っている。

 人気メニューは、観光地のランチ需要に対応した700円の「サムライカレー」、そして希少部位も含む肉をジュージュー音のする焼きたての状態で提供する「溶岩焼き」シリーズ。車内には手入れの行き届いた生ビールサーバーなどを設置。注ぎたて、作りたてのプロの味が楽しめる。

こちらが「走る!居酒屋」。昼間は観光地などに出向き、ランチメニューを振る舞う(写真提供:大政大祐氏)
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 飲食業界の2020年4月、5月を振り返ると、全国的にテイクアウト・ブームの様相を呈していた。「店内飲食は密になるので、持ち帰って、自宅で食べたい」という客側のニーズがあり、店側も少しでも売り上げを確保するために、普段は作らない弁当や総菜セットなどのテイクアウト販売に頼った。しかし、大政さんが見据えていたのは、あくまで「コロナ収束後」の世界だった。

 「お店の方はもちろんテイクアウトにも対応しました。ただ付け焼き刃では意味がないと考えまして、あくまでコロナ収束後も継続できるような商品開発をしました。オリジナル容器を作り、過去にニーズの高かった商品を選び、一過性では終わらない体系づくりを心がけました」

 取りうる対策をした上で、その場しのぎではない成長分野として本腰を入れたのが「走る!居酒屋」だった。先にも触れたが、この新業態は「コロナ対策ではなく、前から新しいビジネスとして企画を温めていた」(大政さん)ものだった。

 「四国最大の人口を持つ松山市は、2010年代前半まで人口が50万人を少し超えたあたりで安定しながら微増傾向だったのですが、これからじわじわと減り始めることが明らかになっています。先手を打っておこうとフードトラック導入を考えて2018年に購入。昨年2019年の夏には大まかなビジネスモデルが出来上がり、後半はブラッシュアップに当てていました。そこにコロナが来たので、待ったなしで実戦を始めることになったのです」

 先にも触れた「サムライカレー」や「溶岩焼き」シリーズなどのメニュー、あるいは車内に設置した生ビールサーバーなどの設備は、プロの味をフードトラックでどこでも提供できるようにするという発想から用意したものだ。

 「さまざまなお客さまのニーズを想定して、当社の料理長とメニューを開発しました。こちらのオペレーションの効率化を図りつつ、お客さまの笑顔を最大限にするにはどうしたらいいかを真剣に考えました。認知されるには時間がかかると思いますが、これからかなり伸びてくると思います」と大政さんは意気込みを語る。

 車のカラーは緑とオレンジ色。愛媛の特産品、温州みかんの黄色と葉っぱの緑を思わせる。

「走る!居酒屋」のカラーバリエーション。緑とオレンジ色の2色は、温州みかんの産地である愛媛のアイデンティティを感じさせる(写真提供:大政大祐氏)
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 「もちろんこれは愛媛カラーです(笑)。生まれ育った故郷を良いかたちで発信していきたいという想いはずっとありますから」

 「走る!居酒屋」は、新しいイノベーションでありながら故郷に根を張る地元密着型なのだ。