ふつうの人も先生になれる場所

 いま社会のサービスも大きく変わろうとしています。教育も従来のような「先生―生徒」といった固定的な関係よりも、お互いに教えあったり、教えることによって自らが学んだりすることによる価値が見出されています。写真館もプロにきちんと撮ってもらうだけでなく、動画撮影はもちろんのこと、もっとカジュアルに自然な表情を捉える撮影だったり、あるいはいい機材を試しに使わせてもらったり、物撮りの際のライティングやスタイリングのアドバイスを受けたり……と、より敷居の低い多様なサービスがニーズに合うようになってきました。そういったことを実現する新しい学びの場として、これからの「塾」のような活動はできないか。

 ぼくたちの提案はその名も「NEW CLASS 求道(くどう)塾」。そこは撮影用のスタジオを基本としながら、空いた時間はさまざまな習い事、教室に使用できる多目的のレンタルスペースとして活用していく計画を立てました。

 そこは「ふつうの人」も先生になれる場所。得意なことや興味のあること、教えたいことや伝えたいことがある人が場所を借りて生徒を集めて、試しにじぶんの塾を開ける場所。生徒と先生を同時に募集し、日々刻々と変わる教室の内容は、ウェブサイトや道路に面した掲示板に告知され、興味のある人が応募していく。なるべくいろいろな用途に対応できるように、大きなアイランドキッチンや十分なスペースを持つ倉庫、プロ用の撮影機材などを揃えよう、その代わりに内装は最低限シンプルなものにとどめよう、という方針を立てました。

 1階にはすでに素敵なカフェがあるので、打ち合わせや打ち上げイベントにはうってつけです。そして何より、かつて子どもの頃、工藤先生に教わったたくさんの生徒たち、今ではさまざまな仕事に就き、特技を手に入れた大人たちが、今度は先生や生徒となってもう一度この建物に帰ってくる、という物語はまちにとっても工藤さんにとっても素晴らしいと感じました。

 この提案は、リノベーションスクール終了後に実現し、その名も「class studio」として運営されています。リノベーションスクールのユニットのメンバーだった片桐くんとフラワーデザイナーである奥様の聡美さんが中心となって、山形に新しい場所が生まれ、そこから日々たくさんの先生、生徒が生まれています。工藤さんもその様子をきっと目を細めて見守っているはず。

工藤ビル概観(写真:class studioのウェブサイトより)
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「class studio」の内観(写真提供:class studio)
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「class studio」にあるアイランドキッチン(写真提供:class studio)
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「class studio」ではさまざまな教室やイベントが開催されている(写真提供:class studio)
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(写真提供:class studio)
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(写真提供:class studio)
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リノベーション前の状態(写真提供:class studio)
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(写真提供:class studio)
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 次ページには、参考としてリノベーションスクール時の運営体制と収支計画を掲載しています。