かつてこの国には「丁稚奉公(でっちぼうこう)」という仕組みがありました。10歳前後で田舎からやってきた子は商店に住み込んで使い走りや雑役をし、礼儀作法や商人としてのイロハを徹底的に教え込まれます。優秀であればその後「手代」「番頭」と昇進し、やがては暖簾分けされ自分のお店を持つことすらできます。

 タワーマンションに越してきた共働き家族の子どもが、家でひとりでゲームをしているのではなく、地域の商店でまちのおとなたちに囲まれながら、学校や塾で学ぶことのできないたくさんのことに触れられたらどんなにいいか。それは商店街の店主たちにとっても良いはずです。新住民という新しい顧客を獲得するきっかけにもなるし、もしかすると丁稚奉公のようにいずれやってくる後継ぎ、事業継承などへの手がかりになるかもしれないのです。

 そこでぼくたちはその仕組みを新たに「Dechets boaucop(デシー・ボクー)」と名付けました。これはフランス語で「たくさんの置き去りにされたもの」という意味で、家に置き去りにされた子どもたち、という意味と、資本主義のうねりに振り回される小さな商店、という意味を併せ持っています。

 ぼくたちは小さなギャラリーショップを設けることにしました。そのお店の役割は、「デシー・ボクー」を受け入れる商店と、そこに行きたい親子を結びつける紹介窓口のような機能です。小さなお店ならではのアットホームな雰囲気、お客さんと気軽に身の上話ができるような、そんな空気の中で、生活様式の異なる新旧住民を新たにつないでいきたいと考えました。

 収支としては、通常の売り上げのほかに、この託児サービスの仲介手数料を売り上げに計上しますが、これはできればその都度、利用者からもらうのではなく、新しい大型マンションの管理組合から育児サービスの一環として受託したいと思っています。そうすれば一世帯当たりの負担が減ってサービスも利用しやすくなり、マンションオーナー側としては「地元の商店街と密接に関係したコミュニティ型子育て」を大きな売りとして活用できると思うのです。共益費の一部にほんの少しコストが上乗せされているイメージですが、いかんせん規模が大きいので、負担はごくわずかになると思います。

 いつか将来、「デシー・ボクー」が柳ヶ瀬で当たり前になって、むしろそんな仲介サービスがなくても自然と交ざり合っていくようになれば、このお店もまた別の稼ぎ方を考えなくてはいけません。

 この提案は、近くにより良い条件の物件が見つかったため、場所をそちらへ移して実現に向けて動いています。クラウド・ファンディングによる資金調達も成功し、この夏のオープンに向けてたくさんの仲間たちの力を借りながら、カウントダウンが始まっています。

「まめぐら」
https://camp-fire.jp/projects/view/211062

■運営体制(リノベーションスクール時のもの)

■収支計画

項目 金額(千円) 概要
収入 管理費(全戸から) 825 1,500円/戸×550世帯
育児サービス利用料 800 4,000円/月×200世帯
収入合計 1,625
支出 人件費 450 150,000円/月 + 50,000円/月×6人
育児サービス運営費 800 4,000円/月×200世帯
借入返済費 67
諸費用 150
支出合計 1,467
月間利益 158

【注】この運営・収支計画は、スクール期間中にチーム内で試算したものです。

筆者 三浦丈典(みうら・たけのり)
1974年東京都生まれ。早稲田大学卒業、ロンドン大学バートレット校ディプロマコース修了、早稲田大学大学院博士過程満期修了。2001年〜2006年までNASCA勤務。2007年設計事務所スターパイロッツ設立。
大小さまざまな設計活動やまちづくりに関わる傍ら、シェアオフィスや撮影スタジオなど、自ら経営や運営にも携わる。
「道の駅FARMUS木島平」で2015年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)。著書に「起こらなかった世界についての物語」、「こっそりごっそりまちをかえよう。」など。