空き家活用を通して、地域での役割を広げようとしている建築設計事務所がある。出身地の鳥取県智頭町(ちづちょう)に戻り、夫婦で設計事務所を営むPLUS CASAだ。空き家の改修設計にとどまらず、地域の仲間とも協働しながら「まちやど」や空き家管理に向けた活動を模索する。

 鳥取県智頭町は、かつて参勤交代で使われた宿場町として栄えた鳥取県南東部のまちだ。日本海に注ぐ千代(せんだい)川がゆったりと流れ、その両側には木々に覆われた山が迫る。

旧宿場町から望む千代川。くっきりとした山並みに囲まれている(写真:守山 久子)
旧宿場町から望む千代川。くっきりとした山並みに囲まれている(写真:守山 久子)
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 2021年秋、観光スポットが集まる旧宿場町の一角で、長く空き家だった戸建ての改修工事がほぼ完成を迎えようとしていた。自家製天然酵母によるパン、地ビールの製造販売とカフェを手掛ける「タルマーリー」が智頭町内に出店する二つ目のカフェだ。2022年春にオープン予定で、1日1組限定のゲストハウスも併設する。

 タルマーリーのオーナーは、石造の地下室を備えたちょっと不思議な戸建てを購入し、細部にまでこだわって内装材や建具を選び、自身で塗装仕上げなどを進めてきた。深みのある青色に塗装した壁、モザイクタイル、ステンドグラスをはめ込んだ調度品などが、梁のむき出しになった室内を彩る。

 店づくりに際し、空き家探しと建物の改修設計でサポートしたのは、地元の建築設計事務所「PLUS CASA」だ。事務所代表の小林和生さんは智頭町出身。2001年に京都府からUターンして、妻の利佳さんとともに設計事務所を営んでいる。

 利佳さんは、旅館やカフェなどの事業に携わる町内の女性4人が2020年4月に立ち上げた「智頭やどり木協議会」の創設メンバーでもある。同協議会は、新たに誕生するタルマーリーカフェの建物内に拠点を置き、まちの観光情報の発信やゲストハウスの運営、空き家相談などを担っていく。

 「新しいカフェとゲストハウスは、旅行者がゆったり滞在できる場所が少ない智頭町の課題を解決するための場。空き家などを改修した宿泊施設と地元店舗とを結び、まち全体を一つの宿に見立てる、いわゆる『まちやど』の拠点となる」(利佳さん)。タルマーリーの工場や自伐型林業家の山を見学し、地元料理を出す店でランチをとる、といったエコ・スタディーツアーなども企画している。

完成間近のタルマーリーカフェ店内。工事中に発見した井戸をテーブルに利用する(写真右下)。壁の塗装などはオーナー自らDIYで進めた(写真:守山 久子)
完成間近のタルマーリーカフェ店内。工事中に発見した井戸をテーブルに利用する(写真右下)。壁の塗装などはオーナー自らDIYで進めた(写真:守山 久子)
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タルマーリーカフェに併設する宿泊施設。建具や照明器具などにもこだわっている(写真:守山 久子)
タルマーリーカフェに併設する宿泊施設。建具や照明器具などにもこだわっている(写真:守山 久子)
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完成間近のタルマーリーカフェ外観。改修計画に際しては「智頭町地域の空き家を活用したまちづくり推進事業補助金」の他、智頭やどり木協議会の活動には「智頭町まちづくり支援事業補助金」を活用した(写真:守山 久子)
完成間近のタルマーリーカフェ外観。改修計画に際しては「智頭町地域の空き家を活用したまちづくり推進事業補助金」の他、智頭やどり木協議会の活動には「智頭町まちづくり支援事業補助金」を活用した(写真:守山 久子)
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