本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転するとして話題を呼んだパソナグループ。2024年5月までに管理部門を中心に1,200人を移動する計画だ。これに先立って2008年、パソナグループは淡路島での活動を開始し、地元では「ついに本腰を入れた」と評価されているという。大型移住のインパクトを含め、同社が淡路島にもたらす数々の影響をキーパーソンに聞いた。

真に豊かな生き方・働き方を目指して

 関西出身者以外にはピンとこないかもしれないが、淡路島は車で大阪から1時間、神戸から40分とアクセスの良い場所に位置する。それゆえ、昔から“ほどよい田舎”として阪神地区の人たちに親しまれてきた。自然が豊かなことに加え、食料自給率が100%を超える食材の宝庫でもある。玉ねぎ、淡路牛、伊勢海老、鯛など、名産には事欠かない。

 2020年9月、その淡路島にパソナグループが本社機能の一部移転を発表した。2024年春までに1,200人が淡路島に移住する計画だ。離島を除いても、日本には1,200人以下の村が多数ある。それを考えると、一つの自治体が移転するほどのインパクトがある。

東浦地区にあるパソナファミリーオフィス(写真提供:パソナグループ)
東浦地区にあるパソナファミリーオフィス(写真提供:パソナグループ)
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 パソナグループと淡路島の関わりは、2008年にまで遡る。この年、独立就農を目指す農業ベンチャー支援制度として「パソナチャレンジファームin 淡路島」を開設。その後も淡路島を拠点とした数々の就業支援を展開し、全国各地から人材を誘致してきた。

 同時に、廃校になった小学校をリノベーションしたマルシェ×レストラン「のじまスコーラ」、兵庫県立淡路島公園に設立したアニメパーク「ニジゲンノモリ」、播磨灘を望むエンターテインメント施設の「HELLO KITTY SMILE」など、ランドマークとなる観光施設を次々に手がけた。2021年にはコロナ禍で窮地に陥った飲食店を救済するため、オープンテラスでさまざまなジャンルの料理が味わえる「淡路シェフガーデン」が2年間の期限付きでオープン。淡路島産の食材を使うなどして人気を博している。

 パソナグループは明石海峡大橋を渡った島北部、淡路市に軸足を置く。移転の効果もあり、淡路市は2020年に初めて転入者が転出者を上回った。

 「いよいよ本気を出したか。これからも一緒にやっていこう──島の人たちからは、そうした歓迎ムードを感じました」と話すのは、パソナグループ常務執行役員の松村卓司氏。2020年2月に家族とともに淡路市に引っ越した、淡路島の事業を管轄するキーパーソンである。

パソナグループ常務執行役員・松村卓司氏(写真:浅野 功(JPC))
パソナグループ常務執行役員・松村卓司氏(写真:浅野 功(JPC))
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 今回の移転は、パンデミックや自然災害によるリスク分散を踏まえたBCP(事業継続計画)が一つの理由だ。その先には、淡路島をさらに活性化し、「真に豊かな生き方・働き方」を実現したいとの目標がある。こうした心豊かな生活の創造を、同社では「Smart Life Initiative(スマートライフイニシアティブ)」と呼んでいる。

 「パソナグループは“人を活かす”ことをミッションとし、社会課題解決のためにビジネスを展開してきました。その解決策として、地方創生と人材育成に注力しています。淡路島では2008年から事業を開始し、農業や観光などで雇用を生み出してきましたが、今後も人が増えるに従って新しい働き方、新しい産業が生まれるに違いありません。まずは淡路島を起点にスマートライフイニシアティブを実現し、全国に広げていくことが狙いです」(松村氏)